「第2回東京宝島会議」を開催!
東京宝島会議について
東京の島しょ地域のブランド化を目指す東京宝島事業の一環として、2018年度は大島・神津島・三宅島・八丈島にてブランド化に向けた議論を行う「島会議」を実施しています。東京宝島会議は島会議を実施している4島以外の7島も含めて東京都の島しょ全域の関係者が出席し、「東京宝島ブランド」として社会的認知を図るため、先進事例を学びながら情報共有や意見交換などを行うことを目的に開催します。
1月29日、第2回東京宝島会議が開催されました。これまで島会議を実施してきた4島の参加者をはじめ11島から約60名が一堂に会し、企業ゲストも参加する中、東京都の高崎秀之多摩島しょ振興担当部長より開会の挨拶がありました。
これまでの間、4島において、都心でのスタディツアーや象徴的顧客像を踏まえた各島のブランド価値、その先にあるアクションアイデアなど、ブランド化に向けた議論が重ねられてきたことを受け、「本日の第2回東京宝島会議は、これまでの議論の中間発表の場。3月の成果発表に向けて様々な分野の専門家にアドバイザーとしてお越しいただいているので、アイデアをブラッシュアップする機会とすると共に、他の島のアイデアにも刺激を受け、今後の取組に向けたヒントにしてほしい」と参加者に向けてエールを送りました。
今回ゲストアドバイザーとしてお越しいただいたのは、以下4名。
- 林厚見氏/株式会社SPEAC(スピーク)
物件サイト『東京R不動産』の運営や不動産プロデュース・空間デザイン事業等を行う - シーソンクラム・カオ氏/株式会社MATCHA(マッチャ)
10カ国語対応の訪日観光サイト『MATCHA』の運営やインバウンド対策のマーケティング業務を行う - 佐藤竜馬氏/NPO法人FLAG(フラッグ)
町の1/3 が米軍基地の福生市で地域資源を生かし、新たな創業者の育成、公共スペースの利活用等を行う - 大谷・パブロ・具史氏/株式会社frasco(フラスコ)
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ブランドコンセプトとアクションプランの発表
ここからは、各島の「誰に」「どんな価値を提供する」「(ひとことで言うと)何なのか」というブランドコンセプトとコンセプトを具現化するアクションプランの発表です。
これまで各島4回の島会議を行い、島のブランドコンセプトを考え、島の宝物を使ったアクションプランを考えてきました。島会議の場以外でも、自主的に参加者が集まってプランを練り上げ臨んだ中間プレゼンテーション。それがどんな形で落とし込まれたのか、発表者らの緊張と、他の島の発表を見る期待感に会場が包まれました。
トップバッターは神津島。今回はオフシーズンの集客増加を目標に、休暇を取る時期が日本とは違う、来島者数が少ない閑散期に来てもらえる30代のオーストラリア人カップルをペルソナ(象徴的顧客)に設定しました。
発表された島のブランドコンセプトは、「ありのままの世界と上手に付き合う Let it be」。「ありのまま」とは、自然が作った水資源や地形、自然の猛威などを無理にコントロールしないこと。「上手に付き合う」ということは、自然の力を認め、共生するということであるとの説明に、参加者は静かに聞き入ります。
ペルソナに体験してほしい神津島の「宝物」として「島の人とのふれあいを楽しめる民宿と島料理」、「水配り伝説などの湧水」、「キンメダイなどの海洋資源と漁村文化」「漁業を中心とした信仰の継承」、「神聖な地名」、「雄大な自然景観・星空」など、伝説や神話が残る豊かな水資源や漁師の支える漁村文化が挙がりました。
アクションプランとして、築地市場を好む外国人に、漁や箱詰めなどの漁業体験やさばき方や天日干しなど加工体験など、ローカルな漁村を体験してもらう「東京漁村験ツアー」や、持続可能性に配慮した水産物の調達基準の認証取得と高付加価値化を目指す「キンメダイのブランド化」を提案。質疑応答でペルソナを外国人に設定した理由を問われると、「外国人は休暇を取る時期が日本とは違い、来島者数が少ない閑散期に来てもらえること」と説明しました。
二番手は、大島。ブランドコンセプトは「行きつけになれる島」で、ペルソナは「都会で暮らしながらも冒険心や好奇心にあふれる38歳女性と、その友達」というとても具体的な説明に、会場から笑いが漏れます。
アクションプランは「元町港から島の西岸5.5キロメートル程に延びる絶景スポット『サンセットパームライン』を世界一の複合ストリート化する」というもの。島民や企業の窓口として事務局機能を備え、住民も観光客も利用できる複合施設として、アートロード(トリックアート)やホースセラピーなどのアクティビティ体験を企画。また、フィッシャリーナ(※)を整備し、「サンセットジャズライブ」などのイベント実施計画も発表された。
※フィッシュ[魚]とアリーナ[劇場]を組み合わせた造語で、漁港を海洋性レクリエーションとして開放し、漁港・漁村地域の活性化や海洋性レクリエーションの発展を目的として整備される総合施設。
ペルソナに体験してほしい大島の「宝物」として「観光客に優しい島民性」、「都心から2時間以内の立地」、「ダイビングやハイキングなどの体験」「雄大な自然」などが挙がり、都心からの立地と島の自然環境のギャップを活かしたアクティビティをアピールしました。
続いての発表は、三宅島。「ペルソナは、都会での社会生活を過ごしている中で、立ち止まって自分自身を見つめ直すきっかけを探している20~30代女性。火山島ならではの「破壊」と「再生」のダイナミズムを五感で味わってほしい」と話し、アクションプランとして、自然体験と農・漁業体験などを組み合わせた「三宅島体感リフレクションツアー」を企画。
ペルソナに体験してほしい三宅島の「宝物」として、「信仰心」、「火山」、「むき出しの自然」、「時間軸ごとに変化する地形」、「一次産業体験」や「自然を活かしたアクティビティ」、「ゲストハウス」などが挙がり、火山を中心とした島のアイデンティティーをアピールしました。
このツアーは、島に向かう船中からガイドが添乗するなど、三宅島までの大型客船の時間で事前レクチャーを行うなどツアー客の心を都心にいる感覚と切り替える時間を設け、島内での自然・食・人との出会いから自分自身を見つめ直す体験観光というアイデア。同時に、一つの巨樹のように島民自体にも三宅島のアイデンティティーを育んでいく役割を担っていくことを樹木の枝葉で表現した「島づくり巨樹論」も展開されました。
発表に対して、ゲストアドバイザーからは「都心部にない島の魅力があるなら、観光に向き合った方が分かりやすいのではないか」とアドバイスがあり、三宅島メンバーも気づきを得た様子でした。
最後は、白衣を着た八丈島の参加者一同。一際目を引く演出が、会場の熱気を高めます。
まず冒頭にペルソナとして設定した「都市生活に疲れを感じるクリエイター女性」が島に訪れたと仮定したイメージビデオが上映されました。自然あふれる島の環境で、時間と共に元気を取り戻していくペルソナ女性の旅を通じて伝えたのは、「好奇心旺盛で自然が好きな女性が『ビタミンH』を得ることよって、自己を再確認し自信と元気をもたらす島」というブランドコンセプトでした。
ペルソナに体験してほしい八丈島の「宝物」として、「ヒーリング」、「居酒屋」、「気候風土がもたらす生産物」「テロワール(※)」「火山と黒潮」「帰ってきたくなる島」などが挙がり、島の自然に裏付けされた豊かな食文化や癒やしを体験できる島であることをアピールしました。
※テロワール......その土地の環境を反映した味わいや香り
そのアクションプランの肝となるのが「ビタミンH」。「ビタミンH」とは、八丈島でペルソナが得る価値(心に刺さる体験・経験、流人文化、もう一つの故郷など)のこと。この「ビタミンH」を得るための冒険を「セルフメディケーション」と表現し、八丈島の旅では、「冒険が心身の不調を整え、元あった正しい場所へ戻しながらもバージョンアップする」と表現。
また、ペルソナが八丈島に出会う最初のタッチポイントとしては、八丈島の食材を扱う都内の飲食店などを定義。シェフやスタッフが島の魅力を語り、それをきっかけに八丈島を訪れたペルソナが冒険を通じて元気と自信を得て、今度は島のリピーターとなり次の顧客を連れてくる――。こうしたサイクルを期待して八丈島の発表を締めくくりました。ゲストアドバイザーからは「来島の動線である『ビタミンH』について、ペルソナへの情報提供のアイデアをもっと深めるべき」とアドバイスがありました。
アクションアイデアのブラッシュアップ
各島のプレゼンテーションを踏まえ、ゲストアドバイザー、ファシリテーター、加の元、アクションアイデアのブラッシュアップを目的としたグループディスカッションを実施しました。ゲストアドバイザーには2島のテーブルを担当していただき、インバウンド事業や地域づくりなどのプロフェッショナルとして、様々なアドバイスをいただきました。
各島のブラッシュアップの詳細はこちら
- <大島>ゲストアドバイザー|①林厚見氏/②佐藤竜馬氏
- <神津島>ゲストアドバイザー|①シーソンクラム・カオ氏/②林厚見氏
- <三宅島>ゲストアドバイザー|①佐藤竜馬氏/②大谷・パブロ・具史氏
- <八丈島>ゲストアドバイザー|①大谷・パブロ・具史氏/②シーソンクラム・カオ氏
ファシリテーターからの総評
<神津島>
神津島はペルソナが外国人ということで、インバウンド事業を推進しているカオ氏から、言葉が通じなくても受け入れ側の対応次第で旅の満足度が変わってくることなど、現実的な意見や提案がありました。また、2人のアドバイザーからのアドバイスを総合して、コンセプト、アクションプランについて、「ありのまま」だと伝わりづらいため、どこにフォーカスするか再度検討の余地があること、また、より具体的なプランとして考えていくために対価を循環させる仕組みについても考えてみるよう伝えられました。
<大島>
大島は、林氏、佐藤氏からアドバイスをいただきましたが、2人に共通していたのは、経済の回し方やお金の回り方についてアドバイスがあったという点。そこで島の人が働くことで、さらに島内にお金が落ちて、そういう視点がないと事業は続いていかないということ、また、大島は、島民自身のインナーブランディング的な要素もあるため、箱物から考えるのではなく、人が関わっていける=エコシステムのような考え方や、参加者が共通認識で描けるストーリーが大事であることが伝えられました。
<三宅島>
三宅島は、佐藤氏、大谷氏よりアドバイスがありました。その中で、「三宅島=火山」は自明のことだが、火山だけでは集客できないこと。また、火山に絞ると、島内の一次産業従事者との関係性も薄くなってしまうという点について指摘があり、この「火山をどうアプローチするか」という課題が残りました。「島民にとっては当たり前のことでも、観光客目線で知られていないことを、きちんと伝える事ができればコンテンツの魅力が引き立つ」というアドバイスがありました。
<八丈島>
八丈島は、大谷氏、カオ氏よりアドバイスがありました。八丈島には何でもあるので、「これが一番の魅力」というものを敢えて絞らない選択に至りましたが、コンセプトの見せ方、表現(カルテ、処方箋)など、初見の人にどう伝わるかを考えていくことで、体験の質も深まるだろうとアドバイス。島が愛される場所になるためには?それを考え明確にしていくことが、ブランディングになると締めくくりました。
少しずつ成功事例を
各島のまとめの発表後、最後に参加者のみなさんに向けて、ゲストアドバイザーから改めて一言ずつ感想をいただきました。佐藤氏は「それぞれの島の方々がすごく熱量を持っていて、すごく元気をもらえました」と話し、一人の観光客として島に通っているという大谷氏は「すでに訪れている観光客に対して、さらに価値を提供していく方が効果が大きいので、そういった点をユーザー視点で考えていくとより良くなると感じました」とコメント。また、カオ氏は「〝きれいな景色です″と発信しても、実際に来た観光客がそれに満足できないと逆によくない。少しずつ成功事例を作って、ゆくゆくそれを島全体に拡大していくと良いと思います」とエールを送りました。
参加者らはこの日の東京島会議で、自分たちの考えてきたアイデアに自信を深めた部分もあれば、まだまだ深堀りして考えなくてはという課題も見つけました。今後は各島ともに2月に行われる第5回島会議で、3月の最終発表に向けたブラッシュアップとブランドコンセプト・アクションプランの磨き上げを進めていきます。
会議終了後の交流会では、ゲストアドバイザーをつかまえて、熱心にお話を聞く参加者の姿も。「あと2ヶ月で最終発表。せっかくここまでがんばってきたからにはアイデアをより良いものにしたい」と話す参加者の言葉が頼もしく響きました。
参加者の声