「第10回東京宝島会議」を開催!

2023年2月8日(水)、「第10回東京宝島会議」を開催しました。第1回東京宝島会議から節目となる10回目の今回は、対面とオンラインのハイブリッド形式で、島の参加者どうしのディスカッション時間を中心にすえたプログラムでの開催となりました。

魅力発信は「地域自慢」から!食材で地域連携した事例を紹介

第一部は「他地域における島間連携の事例紹介」をテーマにした講演です。ゲストに木谷敏雄氏を迎え、「地域自慢から始まる、住民主導・連携による魅力発信」をテーマにお話をいただきました。

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木谷さんは青森県出身の地域作りプロデューサー、ムラとマチを繋げる「感動請負人」として、観光地域づくり、地域特産品ブランド化事業、特産品開発ワークショップなど、数多くの地域活性化事業に携わっています。今回は「連携」がテーマということもあり、他の地域とも連携しながら自分たちのなりわいづくりを行い、情報発信をして、元気作りに繋がっている事例について紹介がありました。

1つ目は、九州の複数の地域が連携し、飲食店に対して食材のプレゼンテーションを行って反響を得た例です。

九州ではツーリズム情報誌に掲載された農家・漁家さんたちが福岡市に集まり、市内飲食店に食材を提案するイベント企画です。福岡、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島の生産者の方々が飲食店向けに食材をプレゼンテーションし、実際にその場で作った料理を食べていただくことで飲食店とのコネクションを作りました。

食材のいちばんおいしい状態を知っている生産者の方々が作った料理を、生産者の話を聞きながら食べていただいたことで飲食店の皆さんも興味が広がり、その場で商談会になるほどの盛り上がりとなったそうです。

この取組をきっかけに、広域でのグリーン・ツーリズムの取組などに発展し、現在では「一般社団法人ムラたび九州」という形で各県のリーダー・実践者が連携した活動を続けています。

マグロを起点としたツーリズムでの地域連携「マグロ女子会」

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2つ目は、「大間マグロ」を共通項にツーリズムで青森と北海道とで地域連携した事例です。大間はかつて秘境ともいわれた地域ですが、まちおこしのために船を大漁旗で迎えたり、水揚げの様子を見せたり、面白いキャッチコピーをつけてまちあるきの魅力を情報発信したことで、多くの人が訪れる場所となりました。

そんな中、北海道新幹線の開業の時期を迎え、青森と北海道のまちづくりキーパーソンとなる女性2名が出会い、「マグロ女子会」を結成しました。津軽海峡を挟んで人をつなげ、「津軽海峡圏の元気づくりの牽引役になる」という目的で結成されたマグロ女子会のメンバーは、いろいろな町に寄り道をし、体験を楽しんでもらうプログラムを展開しています。

町を楽しんだり、津軽三味線のような文化を楽しんだり、食を楽しんだりというバラエティ豊かなプログラムは人気になり、観光庁から表彰をされるまでに。今では会員が青森・北海道南あわせて90名近くまで広がっており、連携地域の拡大を続けています。「津軽海峡圏Wellness博」の中心メンバーとしても活躍し、圏域外からの交流人口の拡大と訪問者の滞留時間の拡大の礎ともいえる津軽海峡に住む女性たちが主導で進めた取組です。

笑って、楽しんで活動を行うことが大切

講演が終わった後は質疑応答の時間になりました。
大間で地域の人々が協力して一致団結しているのが印象的だった、というコメントや、女性がまちおこしのリーダーとなって活躍している姿に感銘を受けたというコメントが参加者から寄せられました。

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木谷さんからは、「今回挙げていただいた事例についても、最初からうまくいったわけではありません。しかし、若い人たちが町を離れる中、自分達の代で終わらせてはいけないという思いを持って下さったことが活動につながっています。」と今後の活動に向けたエールがありました。

また地域でのモチベーションの継続方法についての質問については、笑って、楽しんで活動することの大切さについても語られました。大間では「地域みんなで笑いあっていこう」を合言葉に、「マグロ一筋」と書いてあるユニークなTシャツなど、笑える取組を行っています。地域の人がいかに楽しめるかは重要なポイントです。

興味深い事例の数々に真剣に聞き入りながら、自分達の島ではどのようなことができるのだろうかと考える良い機会となりました。

グループディスカッション、グループAは東京の島への「旅」について考える場に

第二部は2つのグループに分かれて1時間ほどのディスカッションを行いました。テーマは「団体同士の連携で、こんな企画ができるかも!?」団体で横連携したらどのようなことができるのか、仮想の取組を話し合うという企画です。

グループAのテ―マは「新しいツーリズム」です。
こちらのグループでは、まず「旅ってなんだろう?」という原点に立ち返り、それぞれの参加者にとって、旅とはどのようなものかを話し合いました。

その中で多く出た意見としては、現代では簡単に宿や交通機関が予約でき、コンビニ感覚で旅が「与えられたもの」となっていること、自分たちの目指す旅はそこではなく、参加者が自分の力で楽しみ方を発見してもらうようなものではないかということです。

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どんな良い景色でも景色だけではリピートしないといった話や、星を見に来たのに天気が悪く、がっかりしたかと思いきや、「宿の人といっぱい話ができて楽しかった」というお客さんの声があった話なども話題となりました。アンラッキーや予期せぬ事態も人の力で良い思い出に変えられることはあり、人が出会い、集まり、共通体験を話し合える場所があると良い、といったアイデアも出ました。

また、参加者が楽しみ方を発見するために、事前にオンラインで島についての講習をする話や、同じ景色でも立って見る時としゃがんで見る時では違った視点が得られる、など楽しみ方を発見するためのヒントについても意見が交わされました。

こうした話し合いを踏まえて、島を連携して共通で楽しめるアイデアとしては、「火山」という共通の要素を活かしてそれぞれの島での火山トレイルの楽しみ方を紹介していくアイデアや、「満月」「大潮」といった自然のサイクルに合わせてみんなで島酒を飲むバーイベントを行うなどのアイデアが出て、参加者からは「いいね!」といった声があがっていました。

発表は、八丈島「七色八丈で『Re:TABI』」プロジェクトの魚谷孝之さんと神津島「神津島高付加価値化プロジェクトチーム」の田中健太郎さんの2名によって、ディスカッションで出たエピソードやアイデアが紹介されました。

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グループBは、どんなコンテンツが開発できるか、アイデアがたくさん飛び出す

グループBのディスカッションテーマは「東京宝島のコンテンツの魅力を伝える『新しい売り出し方』とは?」です。オンラインでの参加者もたくさんおり、にぎやかなディスカッションとなりました。

島のコンテンツに関する悩みとして「島のコンテンツが島外になかなか届かない」「島外に持っていくときに送料が高くなってしまう」「島ごとのイベントを共通でできないか」などの意見が出る中、今回のメインテーマとしては、「現在あるコンテンツをどうやって島外に発信するか」を設定して行うことにしました。

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島自体を知らない人が多いため、1つの島に興味を持ったら他にも興味を持てるようにしたいという意見や、SNSや動画発信はチームを組み、影響力のある島のインフルエンサーが他の島のモノ、コトを紹介していったら良いのではという意見、各島の「島娘」のようなキャラクターを作ることによって「推し」が生まれ、横のつながりが生まれるのではというアイデアがたくさん飛び出しました。

一方で、キャラクターに頼らなくても、島の人が「この人に会いたい」というキーパーソンになり、その人を通してファン層を拡大できる可能性についても語られました。

続いて、こういったコンテンツを誰に届けたいかというトピックになりました。この中でキーワードとなったのが「アイランドホッパー」の人々です。元々島が好きな人で、次はどこの島に行こうかと考えている人に対して、他の島の情報が提供できると、他の島に対しても興味を持ってくれるのではないかという考えです。そのために、島への船内で流れるビデオでも、イメージ映像だけでなく、もっと深い生活などが伝わると良さそうだといった意見もありました。

しかし、そのためには各島の人が他の島のことを知っている必要があります。各島の交流をもっと行い、各島に住む人が改めて島の魅力を知って、人に伝えていく必要があるといった意見にも参加者の皆さんは頷いていました。

発表は、八丈島の「シン・七色八丈プロジェクト」の浅沼碧海さんより行われました。

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発表には、「食材」を各島で連携するアイデアもコメントが寄せられました。各島のフルーツや名産のお菓子を集めた「島パフェ」があっても面白い、といった話もあり、コンテンツの連携はまだまだ可能性がふくらみそうです。

各グループの発表を受け、木谷さんからは、こういった連携について、話合いを継続してほしいとの応援コメントがありました。

「島に行ったら絶対満足してもらえるのですが、どうしたら行きたいという気持ちを喚起できるかが重要です。『伝える』ではなく『伝わる』がないと来ていただけないので、ぜひ伝わるための方法を考えていただきたい。2、3人からでもいいと思いますので、連携を少しずつ始めていただき、大きなうねりを作っていただければと思います。」

島どうしの「競争」と「共奏」の大切さ、これからの東京宝島を考える

最後は東京宝島推進委員会の山田委員長より、ファッション・デザイナーのココ・シャネルの生き方を例にとって人がブランドを作るということや顧客視点の大切さ、交流を深めながらも競争して良いものを提供していくことの大切さをメッセージとして贈っていただきました。

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「シャネルはココ・シャネルの生き様が反映されたブランドであるように、人がブランドを作るのです。私がシュノーケリングで出会った現地の方が魅力的だったという理由でリピートを決めたように、人が魅力的であることはとても大事だと思います。ディスカッションでも両方のグループで人についての大切さを語っておられたのが印象的でした。これから皆さんはそれぞれの島々の間の交流も深めながら、独自の色を引き出す『競争』と協力して共に奏でる『共奏』を両方行っていっていただければと思います。」

東京宝島では、今年度、12団体の皆さんが工夫を凝らした取組を行っており、年度末にかけてその成果も現れ始めています。今回は島の皆さんが和気あいあいと、真剣に語り合うディスカッションの場もあり、島を越えてできることの可能性も見えてきたのではないでしょうか。これからの東京宝島の展開も楽しみとなる第10回東京宝島会議となりました。

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