飲み続けても飽きない 日常に寄り添う味を 新島酒蒸溜所 4代目・宮原淳氏 インタビュー
新島唯一の蔵元「新島酒蒸留所」4代目・宮原淳氏に、蔵元の歴史や看板商品「嶋自慢」、島の現状や課題についてお話を伺いました。

屋号の由来と100年の歴史
―貴社名の「新島酒(しんしまざけ)蒸留所」という読み方にはどのような由来があるのでしょうか?
実は10年前くらいに付けた名前なのですが、「一発で読めないようにしよう」という遊び心もありました(笑)。もともと島ではお酒のことを島酒(しまざけ)と呼んでいましたし、新島で"新しい島酒"を造っていこうという想いを込めています。
―1926年創業ということは、今年でちょうど100周年ですね。おめでとうございます。
2026年7月5日でちょうど100周年を迎えました。実際には酒造りの歴史自体は100年以上あるようです。私の曾祖父は、島に根付いてから醸造と名の付くものなら味噌も醤油も何でもやっていた、かなりのやり手だったと聞いています。戦後、日本軍の指導などもあって本格的に焼酎造りに絞られていきました。

看板商品「嶋自慢」
―看板商品である『嶋自慢』のこだわりや特徴を教えてください。
うちがずっと昔から目指しているのは、「ゆるゆると飲み続けられるお酒」です。一口飲んでガツンとくるような刺激ではなく、おつまみを食べながら、飽きることなく寝るまでゆっくり楽しめるような、日常に寄り添う味を大切にしています。
―昔の島酒は独特の臭みがあると言われることもありましたが、今はどうなのでしょうか。
確かに昔は油臭などと呼ばれる臭みがある時代もありましたが、今は造りも非常にていねいになりました。同業者との情報交換や技術の向上によって改良を重ね、今は自信を持って自慢の酒と言えるものになっています。

地域の子どもたちとの繋がり「七福 嶋自慢」
―地元の高校生と一緒に焼酎を造る『七福 嶋自慢』の取り組みについて伺えますか。
もう20年ほど続いている活動です。高校の授業の一環として、生徒たちが苗を植え収穫したあめりか芋を使って、私たちが焼酎を造ります。そして彼らが成人式を迎える日に、その焼酎をプレゼントするんです。自分の育てた芋でできたお酒を20歳で飲む。島の伝統や文化を肌で感じてもらうきっかけになればと思っています。

―『七福 嶋自慢』の原料であるあめりか芋(七福)にはどのような特徴があるのでしょうか。
あめりか芋は新島のソウルフードとも言える白いサツマイモです。栽培が難しく収穫量も安定しない希少な品種なので、特産品として今後もなくしてはいけないものだと思っています。
―「東京島酒」としてGI(地理的表示)認定も受けられましたね。
GI認定を受けたことで、全国の酒屋さんからも「東京にこんなお酒があるのか」と注目されるようになりました。新島独自の麦麹とアメリカ芋の組み合わせは、独特の甘みと深みのある味わいを生んでいます。最近では海外でも少しずつ知られ始めています。
―新島酒蒸留所の焼酎をおいしく飲むアドバイスをお願いします。
おすすめはソーダ割りや、常温の水で割る、ぬるい水割りですね。ぜひ新島に来て、島寿司やくさや、たたき(魚のすり身の揚げ物)と一緒に味わって欲しいです。

島の現状と今後の展望
―宮原さんご自身は家業を継ぐことを決めていたのですか?
高校と大学進学のために島外に出ましたが、いずれは新島に戻るつもりでいました。久しぶりに新島に帰って来たときも、住んでいた頃と変わらない雰囲気が良かったですね。のんびりした空気感とか海とか。
―島特有の苦労や、今後の課題はありますか?
島では高齢化や人口減少が進んでいて、物流や宿泊施設の不足など、観光面でも課題がありますね。
―これからの展望についてお聞かせください。
今後は販売量をもう少し増やして、あちこちで『嶋自慢』を飲んでもらえるようにしたいです。そのためにも、まずはていねいに、より良いものを作り続けることが一番だと思っています。
株式会社宮原 新島酒蒸留所
https://shimajiman.com/