歴史を積み重ねた 情けの味 八丈興発 山岸義広氏 白石就氏 インタビュー
八丈島の蔵元「八丈興発」の工場長の山岸善広氏と、新たに造り手として入社した白石就氏にお話を伺いました。

GI「東京島酒」の認定と海外への広がり
―GI(地理的表示)「東京島酒」の指定を受けてから2年が経ちましたが、反響はいかがですか?
山岸善広:GIは宣伝の仕方次第で価値が変わります。私たちはイベントなどを通じて積極的に発信しています。
―海外への輸出も始まっているそうですね。
山岸:現在はフランス、韓国、台湾などに出荷しています。特に韓国では、高級なスピリッツとしての需要があり、売れているようです。地元の焼酎チャミスルのようなさっぱりとした酒質ではなく、飲みごたえのある酒として注目されています。

―国内でも「酒屋が選ぶ焼酎大賞」で2年連続優秀賞を受賞されるなど、プロの評価も高いですね。
山岸:酒屋さんがブラインドテストで選ぶ賞なので、公平な評価として自信に繋がっています。お店でお客さんに勧める際の大きな基準にもなっているようです。

伝統の製法「仕次ぎ法」と味わいのこだわり
―看板銘柄『情け嶋』のおいしさの秘密を教えてください。
山岸:最大の特徴は「仕次ぎ法(しつぎほう)」という貯蔵法です。タンクを空にせず、ある程度減ったところで新しいお酒を継ぎ足していく、いわば「秘伝のタレ」のようなやり方です。これにより、何十年も前の「情け嶋」のエッセンスが少しづつ生きている。これが新酒には出せない「丸み」と「歴史」を生んでいます。

―飲み口が非常にクリアなのも特徴的ですよね。
山岸:蒸留の際に圧力を下げる「減圧蒸留」を採用しています。これによって素材の香りを残しつつも雑味が取れ、どんな料理にも合うスッキリとした口当たりになります。八丈島のおいしい水、そして島独自の麦麹を使う伝統を守りつつ、洗練された味を目指しています。

自然の猛威と、島外からの原料確保
―2025年の台風では、かなりの被害を受けたと伺いました。
山岸:工場のドアが風で破壊され、積んでいた瓶やラベル、段ボールが水浸しになってしまいました。さらに断水が起きたことで製造が止まってしまって出荷に規制がかかってしまったり。ただ、島の人間はタフです。台風と共に生きてきた歴史がありますから、楽観的に前を向いて、今できる最善の酒造りを続けています。
斬新な「コラボレーション」と11月のイベント
―他社の蔵元とブレンドするという、非常に珍しい試みもされていますね。
山岸:2025年に熊本県の「大石酒造場」さんと、今年は福岡の「ゑびす酒造」さんとコラボしたブレンド焼酎を発売しました。完成されたお酒同士を混ぜるのは勇気がいりますが、お互いの良さが引き立ついい塩梅を試行錯誤して探り出しています。予約段階で完売するほど反響が大きく、これをきっかけに八丈島の酒を知ってもらればと思っています。
―令和8年11月1日の「本格焼酎の日」には、八丈島で大きなイベントがあるとか。
島内の4つの蔵元とくさやの組合、さらに町も協力して、八丈島を「焼酎の島」として盛り上げる第一回のイベントを計画しています。新作の発表も予定しており、島全体を巻き込んで盛り上げたいと考えています。

新しい風:サラリーマンから「島の酒造り」へ
―ここで、新しく加わった白石就さんにお話を伺います。移住のきっかけは何だったのですか?
白石就:もともと東京でサラリーマンをしていたのですが、大の焼酎好きでイベントにも通い詰めていました。共通の知り合いを通じて社長の小宮山善友さんをご紹介いただいた際、「そんなに好きなら、うちで造ってみるか?」と声をかけていただいたのがきっかけです。
―実際に島で暮らしてみて、いかがですか?
白石:移住してすぐに1ヶ月間の断水を経験しました。自転車で山の上にあるホテルの大浴場まで通ったり、雨水を溜めてトイレに流したり......過酷でしたが、島の人たちが本当に温かく迎えてくれたので、不安はありませんでした。
―白石さんが今後、八丈興発で挑戦したいことは?
白石:焼酎に馴染みのない若い世代にも魅力を知ってほしいです。島特産の八丈フルーツレモンやパッションフルーツで割る飲み方も広めたいですし、島特産のくさやと合わせたバーベキューイベントなど、「食×酒」の新しい体験をどんどん提案していきたいですね。
八丈興発株式会社
https://hachijo-oni.co.jp/