原料は利島の椿?色鮮やかなピンクのビールが島に眠る可能性を掘り起こす。

東京の島に眠る可能性を、見つけて、磨いて、届けていく、東京宝島プロジェクト。今回のレポートは利島から。島の面積の約8割を椿の木が覆い、江戸時代から「椿の島」として知られている利島。島の伝統的な産業である椿を活用した新事業として、ビールを開発に挑んでいる、「椿ビールで乾杯チーム」の取り組みをレポートします。

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人口の6割を占める移住者に、
椿のことを知ってほしい。


ー利島の基幹産業である「椿」でビールを作られているとのことですが、
そもそも始められたきっかけは何だったのでしょうか?

利島は椿油の生産量が国内12位を誇る、全国でも有数の椿の島です。栽培の歴史は古く、江戸時代から300年を数えるほど。主にヘアケアやスキンケアに使われる椿油は利島を代表する特産品ですが、実はその生産量は天候などの関係で年によって5倍近くも開きが出るほど不安定。そこで椿油だけの収入に頼らず、新たな椿産業を起こすことで、産業を多角的に展開していきたいねらいがありました。

ー確かに利島の椿油は見かけたことがありますが、他の椿製品はあまり見たことがなかったかもしれません。
新たに開発する製品に「ビール」を選ばれた理由は?

利島は人口約300人の小さな島ですが、実は島外からの若い移住者が6割以上を占めています。しかし、若い移住者の方々は椿産業に関わる機会があまりありません。移住者の割合が増えてきた中で、農家と移住者との交流の機会を増やし、産業の価値と課題を知ってほしいと思い、若い方にも身近なビールを題材に新しい事業を起こせればと考えました。「椿ビールで乾杯」という私たちのチーム名にもあるように、椿ビールでゆるーくみんなで乾杯して、島民同士のつながりを作り、利島の伝統産業である椿に少しだけでも興味を持ってくれたら、という思いが込められているんです。

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花酵母から生まれる味を、
島民みんなで磨いていく。

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ーなるほど、若い移住者の方々と伝統産業がつながるきっかけにされているのですね。
椿ビールはどのような特徴のビールなのでしょうか?

東京農業大学の協力のもと、椿に関わる原料を使った独自のレシピを開発しています。完熟した椿から生まれた天然の花酵母を使用しており、酵母の持つりんごのような風味と深い味わいが特徴です。さらにビールの味わいにコクを出すアクセントとして椿油も使う予定なんです。

ーこれまで眠っていた椿の可能性を、まさに発見されたのですね。
今後の活動予定について教えてください。

2023年度は「椿の可能性を探求」するとともに、「椿の素材から醸造テストと試作」という方針のもとに活動を進めてきました。今後は、椿の花酵母がビール醸造に適しているかなど、素材がビール原料として使用できるのかのテスト検証と、そこからの味をイメージした椿油の添加量を決めるレシピ調整をして試作を行います。その後、2024年夏には製品化と販売開始を目指しています。

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ーありがとうございます。意外ともうすぐなのですね!

2024年夏の販売に向けては「流通や販売方法にも工夫をし、ビールから島外の人が利島に興味を持っていただけるような販売展開を目指す」とのことでした。


島民一丸となって開発したともいえる色鮮やかな椿ビールは、
伝統産業の新たな可能性と、ここから人々が繋がっていく予感を感じました。
お店や飲食店に並ぶのが待ち遠しいですね。椿ビールの今後に乞うご期待ください!