Z世代と一緒に、島の魅力を再発掘!若者とともに島の未来を模索するプロジェクトとは?

東京の島々に眠る魅力を見つけ、磨き、発信する「東京宝島」プロジェクト。島の魅力はたくさんあれど、次の世代に伝えていくことはなかなか難しいもの。そこで今回は、さまざまな課題を持つ島々の事業者と若者を繋ぐ、ブランドサポーターシップという取り組みについて取材することに。運営を担当する事務局の方と、プログラムに参加された3つの島の事業者さんにお話をお伺いしました。

若者を招き、島の事業者のもとで
魅力を広めるアイデアを企画。

―まずはブランドサポーターシップの概要について、事務局の前田さんにお伺いします。具体的にどのような取り組みなのでしょうか?

前田さん:東京の島しょ地域の魅力を若者に発掘してもらい、島と新しい世代とのつながりを強化する取り組みです。実際に島に学生を招き、Z世代視点で島の特産品をもっと知ってもらうアイデアを考えてもらうことで、若者とつながりを深めることが目的ですね。今回のプログラムでは、観光や地域活性を学ぶ13名の大学生に参加していただきました。

出陣式が実施された東京宝島推進委員会(第8回)の様子はこちらhttps://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/governor/governor/katsudo/2023/08/0831_02.html

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―プログラムの中身を教えていただけますか?

前田さん:まずは事前学習を受けてもらい、その後、各事業者のもとで実習に参加していただきました。フィールドワークや取材を通して特産品の生産工程などを知ることで、実体験をもとにした発想を期待したんです。さらに、アドバイザーに自治体向けのプロモーションで実績のある専門家をお迎えし、お力添えいただくことに。その結果、Z世代ならではの、たくさんのアイデアが集まりました。

―学生も主体的になれる面白い仕組みですね。どんなアイデアが出たんでしょうか?

前田さん:Z世代のみなさんからは、時代背景を捉えながらもいろんな切り口からのアプローチがありました。中には、島内研修が終わっても積極的にSNSを発信してくれている学生さんたちもいて、とても嬉しいですね。

―どんな課題に対してどのようなアイデアが生まれたのか、気になりますね。それでは、次からそれぞれの島の事業者のみなさんに具体的にお伺いしていこうと思います。

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お酒を嗜む新しい場の提供で、
島酒の魅力を広めていく。

―八丈島では伊豆七島の島酒を広める東京七島酒造組合から、八丈興産の小宮山さんが参加されました。1947年創業という長い歴史を持つ蔵元が抱える課題とは、どのようなものだったのでしょうか?

小宮山さん:今って飲まない若者が増えているじゃないですか。そもそも焼酎を飲む機会が減っている中で、島酒の焼酎をもっと多くの若者に飲んでもらうにはどうすればいいだろうと頭を巡らせていました。

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―若者のお酒離れに対する施策は、全国的にいろんな企業が取り組んでいますよね。

小宮山さん:そうなんです。まずは、飲むハードルを下げなければいけない。そこではじめに学生たちが注目してくれたのが、"お酒が飲めないわけではないけれど、お酒の味が好きというよりも場が好きで飲んでいる"という若者の気持ちでした。打開するアイデアとして彼らが提案してくれたのが、島酒の新しい割り方を提案する試飲会。それはソーダや水割りではなく、コーラや紅茶で割るといった斬新なアイデアでした。一見突飛な発想ですが、これなら若者も興味が湧くのではないかと。

―ユニークなアイデアですね。他にはどんなアイデアが出てきたんでしょう?

小宮山さん:他は、飲酒マナーの啓発をねらった、島酒の銘柄や島の景色を紹介する動画制作。あとは、観光ガイドと協力して星空の下で島酒を飲むなど島の財産と掛け合わせたイベントで島酒のファンを作っていくという企画もありました。

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椿をギフトにすることで、
若者には親近感を。
利島の農家には誇りを。

―つづいては利島の取り組みです。参加されたのは、椿農家を営む利島農業組合の加藤さん。椿は江戸時代から続く利島を代表する産業ですが、時代が変わるとともに新たな課題が生まれてきているようです。その課題とはどのようなものだったのでしょう?

加藤さん:まずは、若者に対してもっとアプローチしたいということですね。利島の椿油は現状、40代以上の方に愛用していただいているのですが、もっと多くの若者に知ってもらうにはどうすればいいだろうと考えていました。また、島民と椿農家さんに利島の椿を誇りに思ってもらうにはどうすればいいかという課題もありました。

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―椿といえば、親しみのあるお花ですね。どんなアイデアが出てきたんでしょう?

加藤さん:実習を通して学生さんたちは、「体験してもらうことで利島の椿の良さは伝わる」と思ってくれたようでして。「ギフトを通した体験」と「利島での体験」という二つの方向性でアイデアを考えてくれました。提案してくれたのは、椿の花の形をモチーフにした可愛らしいパッケージでした。Z世代はパッケージへのこだわりがあるそうで、ホワイトデーや母の日などのギフトとしての需要として新パッケージを考案してくれたんですね。また、島の暮らしを知ってもらうための移住体験プログラムの開発も。椿拾いや搾油の体験などができる移住体験ツアーを通して、島に椿の文化があることを伝えようと考えてくれました。

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定番である大島の牛乳煎餅を、
若者の感性であたらしく。

―最後に大島での取り組みの紹介です。お伺いするのは、夫婦でお土産屋を営むえびすや土産店の津崎さん。島のお土産として定番である牛乳せんべいですが、時代に合わせて変化が必要だったとのこと。お話を具体的にお伺いできますか?

津崎さん:まず大島は島の高齢化率が高いことが課題で。観光の島として人を呼びこむ必要がありました。また、島を代表するお土産のひとつでもある「牛乳煎餅」をもっと若者に知ってもらいたいと思っていました。牛乳煎餅はもともと、皇太子殿下に伊豆大島の味をお召し上がりいただきたいと献上するために生まれた、歴史あるお菓子。100年以上前から手焼きにこだわり続けています。そのような歴史と伝統は守りつつも、今の時代に合わせて牛乳煎餅を磨き上げていきたいと思っていました。

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―最近でもSNSで学生さんたちが積極的に発信されていましたよね。どんなアイデアが出てきたのでしょうか?

津崎さん: まず大島の文化を知ってもらうための6日間の現地実習に参加してもらったのですが、実際に訪れたからこそ感じたことがたくさんあったのか、SNSでの展開を中心に盛りだくさんの提案をいただきました。島内研修が終わってからも提案を持ってきてくれたり、感謝しています。具体的にお話ししますと、牛乳煎餅のモチーフである焼印の新しいデザインを提案してくれました。学生が考えた原案をもとにデザインを起こし、ゆくゆくは焼印の制作をする予定です。都心部でもPRしていくために、ファーマーズマーケットの出店というアイデアももらいました。三つ目は、SNSや店頭POPで使えるキャッチコピーの制作も考えています。他にも牛乳煎餅のアレンジレシピなど幅広く考えていただきました。

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若者に実際に島を来訪してもらうことで、Z世代らしいアイデアが生まれて島の魅力が開花していく。とても魅力的なプログラムでしたね。今も現在進行形で、ぞくぞくと企画が実現していっているようです。学生さんたちの視点から生まれたアイデアが形になっていくのが楽しみですね。プログラム中は、各事業者のSNSで活動の様子を学生が積極的に発信していたとのこと。プログラム終了後のアンケートでは島のことを好きになった、肌で感じたことを企画にできた、という声もたくさんあったようです。結果は第12回東京宝島会議のレポートでもお伝えする予定ですので、そちらもお楽しみに。