島の特産品をリプロモーション。新たな魅力とともに、「新島ガラス」を日本中に広めていく。

東京の島が持つ魅力を様々な視点からご紹介する「東京宝島」プロジェクト。 今回は、伊豆諸島の中で3番目に近い島、新島の特産品「新島ガラス」の新たな取り組みについてレポートします。

2024-niijima2_3.png

世界で2カ所しか採れない
石からできる色ガラス。

―まずは、新島の特産品である「新島ガラス」について教えていただけますか?

島で採れる「黒雲母流紋岩」という火山岩を原料とした天然の色ガラスで、含まれている鉄分によってオリーブ色に美しく発色するのが特徴です。島では「コーガ石(せき)」と呼ばれるこの火山岩は大変珍しいもので、世界でもイタリア南部のリパリ島と、ここ新島でしか採れません。
私たち新島ガラスアートセンターは、この「新島ガラス」を観光資源や芸術作品の素材などとして活用するために、1988年に活動を開始しました。ワークショップや作品制作を通じて国際交流の場を提供しており、中でも毎年開催している「新島国際ガラスアートフェスティバル」は、日本各地からだけでなく海外からも多くの人が参加するイベントになっています。島内には、島を訪れた作家たちの作品を中心に展示した「新島ガラスアートミュージアム」も設置されています。

2024-niijima2_1.png

-それだけ貴重な原料からできているのであれば、まさに新島を代表する特産品ですね。今回、そのイメージを変えるようなプロジェクトに取り組まれたきっかけは何だったのでしょうか。

新島ガラスは、ワイングラスや箸置きなどの製品をつくったり、島内の旅館の装飾品として用いたり、島ならではの産品として愛されてきました。ですが、ポテンシャルを発揮し切れておらず、あまり知られていない特産品になっているのではないかという課題を感じていました。島ではお土産品として手に入るのですが、島外での認知がまだ不足していると思っていたのです。
そこで、外部の専門家の方々の知見もお借りして、現在のライフスタイルや生活者ニーズに合わせた商品開発をし、それをきっかけに全国へと認知を拡大し、販売を広げる取り組みに挑戦することにしました。



地域の個性発掘に優れた
デザイナーの視点で、
新島ガラスの新しい魅力を探る。

-どのような専門家の方々と一緒にプロジェクトを進められているのでしょうか。

著名なデザイナーであるナガオカケンメイさんが創設された、D&DEPARTMENT(ディアンドデパートメント)にアドバイザーとして入っていただくことにしました。D&DEPARTMENTは「47都道府県に"デザイン道の駅"をつくる」というメッセージで、全国各地に店舗展開をしていて、各地域に根ざした商品開発なども多数手がけていらっしゃるので、ぴったりなパートナーだと思っています。

2024-niijima2_2.png

-デザイナーの方と一緒に、どのようなことに取り組まれているのでしょうか。

合計3回の「商品アドバイス会」で、メンバーが集まって議論を重ねているところです。昨年12月に行われた第一回目のアドバイス会では、2日間にわたって実際に新島を訪れていただき、新島ガラスアートセンターや島内の視察を行いました。ガラス工房で実際の制作現場を見て産品に対する理解を深めていただくだけでなく、原料であるコーガ石の岸壁が見られる羽伏浦海岸や、新島村博物館なども視察してもらうことで、産品が生まれる背景となる島の風景や文化、空気感を感じてもらいました。
そのような環境で私たち事業者とアドバイザーの皆さんでディスカッションを行った結果、島の海岸で見られる消波ブロックをモチーフにしたペーパーウェイトや、思い出のかけらを持ち帰るためのガラスボトルキャップなどをつくってはどうか、という方向性が決まりました。
今後は、D&DEPARTMENTが展開する「d47 design travel store」や、オンラインストアなどでテスト販売を行いたいと思っています。外部の方にアドバイスをいただいた新しい新島ガラス製品で、今までとは違った方々に情報が届いて、その反応を聞けるのが今から楽しみです。

2024-niijima2_4.png

-D&DEPARTMENTファンの方々や、デザイン感度の高い方々にも、新しく知ってもらう良いきっかけになりそうですね。実際にお店に商品が並ぶのを、楽しみにしたいと思います。

長く島内でつくられてきた名産品としての特色や歴史を尊重しながら、新たなターゲットを取り込める商品としてブラッシュアップしていく今回の取り組み。歴史ある新島ガラスが、デザイナーの目が入ることでどのような商品に生まれ変わるのでしょうか?実際に店舗で手に取れる日が来るのが待ち遠しいですね。