子供の目で森をトレッキング?!新しい旅プロジェクトで、秋冬の八丈島の魅力を発掘!

東京の島々に眠る魅力を見つけ、磨き、発信する「東京宝島」プロジェクト。突然ですが、みなさんは自然が好きですか?澄んだ空気に青い空、どこまでも広がる緑。でも、それだけが島の魅力ではありません。八丈島が提案するのは、"利他"というキーワードに注目した、気づきと発見の旅、その名も『Re:TABI(リタビ)』。気になる詳細を知るべく、主催者の魚谷さんにお話を伺いました。

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コロナ禍での八丈島らしい旅を
新しく定義する。

―『Re:TABI』という言葉には、どういう意味が込められているんでしょうか?

魚谷さん:まず、リタビは「Re:旅」と「利他の旅」の意味を併せ持った造語なんですね。さまざまな制約が生まれたコロナ禍で私たちは、旅を再定義することが必要になるのではないかと考えました。なので「Re:旅」には八丈島における旅を新しく、もう一度はじめる。そんな意味が込められています。

―「利他」の意味づけは後から来たんですね。

そうですね。利他の話は"リタビ"という音から生まれたんです。ただ、利他の話を全面に出すと少し違和感があったので、視点を変えた方が良いのではないかという話になりまして。そしてオーディオガイドとともに森を散策する旅、という旅のアイデアが出てきたんです。

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考案したのは、子供の目で
森を散策する新しい旅。

―オーディオガイドとともに森を散策する旅。なんだか面白そうですね。具体的に伺えますか?

魚谷さん:はい。オーディオガイドとともに森を散策する旅、その入り口は沢の小径をトレッキングすることから始まります。大人になると、子供のような感受性は失われてしまうじゃないですか。でも、もしもオーディオガイドで"子供の目"をインストールできたら?そこで考案したのが、「しゃがんでみる」「目を閉じてみる」という2つの視点をくれるオーディオガイドと共にゆく、トレッキングの旅でした。森の中に息づいているのは、神秘的で不思議な存在。立ち入る人の少ない森ゆえに、八丈島らしい自然な森の姿を見ることができるんです。

―八丈島といえば海のイメージですが、山に注目したのはなぜですか?

魚谷さん:まさにそこがポイントで。マリンスポーツや釣りなどは人気な一方で、山の魅力を伝えきれていないという課題がありました。訪れる観光客の数は夏がピーク。秋から冬にかけてのオフシーズンにも、島を訪れてほしい。それならば、島民も知らない森の魅力を伝えようと思い至りました。

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神秘的な森で気づくのは、
己を忘れて埋没することで
発見する何か。

―プロジェクト名の由来でもある"利他主義"は、八丈島とどう結びつくのでしょうか?

魚谷さん:これまで私たちは「自分の色を取り戻す、七色の魅力に輝く島」というコンセプトで、活躍している島民を通じて八丈島の魅力を発信してきました。彼らに共通していたのは、「(己を忘れ)八丈島(他)を利する」という姿勢。"利他主義"はコロナ禍を経て注目された言葉ですが、「競い合うのではなく、他者のために生きる」という姿勢が八丈島の自然ともリンクしたんです。

―辞書を引くと、利他主義とは「自分を犠牲にしても他人の利益・幸福を考えて行動するやり方」とありますが、ここでの"利他"とは少し違うのでしょうか?

魚谷さん:はい。コロナ禍を経て再定義された "利他主義"は、自分を犠牲にするというものではないんです。ここを理解するためにまずは、オープンな勉強会を開催しました。お招きしたのは、『「利他」とは何か』という本の著書でもあり、"真の利他"を実現するために発信されている東京工業大学の伊藤亜紗教授です。そもそも、"利他"とはどういうものなのか。利他についての考えを深めたんです。そこで投げかけられたのが、利他とは先回りしてなにかを与えることではなく、木漏れ日のように「漏れる」ものなのではないか、という提唱でした。

―利他とは、木漏れ日のようなもの。まさに八丈島の自然に通ずる話ですね。

魚谷さん:木漏れ日、つまり、押しつけではなく「漏れる」ものが利他なのではないか、と。植物は木漏れ日という光があるから育ちますが、木は植物のために光を照らしているわけではありません。光が漏れだしているだけ。自ら与えるのではなく「漏れる」ことこそが真の利他なのでは、と。まさに森の中に己を埋没させることで、"新しい何か"を発見する今回の旅に通じました。

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旅人に山の魅力をとどけて、
多くの人にリタビを広めていく。

―子供の目で体感する"利他の旅(リタビ)"で、新しい何かを発見する。とてもユニークですね。今後はどのような取り組みを予定されていますか?

魚谷さん:未開拓だった山の魅力を旅人にとどけるために、リタビの拡充を進めます。具体的には、イベントを実施しようかと。そこで得られた知見をもとに、さまざまな機関に協力を仰ぎ、ゆくゆくは自走化を目指していきたいと考えています。

―地域の皆さんなどに広めていく活動も予定されていますか?

魚谷さん:親子向けにも場を設けようと思っています。山の専門家を交えたトーク会をしたり、親子でのフィールドワークも予定していますよ。"リタビ"をもっと多くの人に広めていくために広報していく意味でも、こういう活動をもっとやっていきたいですね!

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今後も楽しみですね。神秘的な森の旅から帰ってきたとき、私たちはこれまで気づかなかった"新しい何か=特別なもの"の存在に気づくかもしれません。みなさんも毎日に少し息切れしてしまった時は、自然の中に埋没する旅に出るのはいかがでしょうか?それでは、また次回のレポートでお会いしましょう!