島の柑橘「かぶつ」(ダイダイ)を活用した新たな関係づくりを
御蔵島では、2020年度開始当初は「島内で集まれる場所づくり」を目標に、「食」を切り口とした、移動販売車を導入する計画の検討を進めてきました。
しかし、長引くコロナ禍の状況を踏まえて、計画の柔軟な変更が求められました。島のメンバーの議論は、リアルな場以外でも御蔵島との新たな「つながり」を創出できないか?という方向に発展していきました。
こうした検討の中で注目されたのが、冬の御蔵島の山の畑で丸々と育った柑橘「かぶつ」(ダイダイ)です。かぶつは冬の味覚として料理に使われるだけでなく、お風呂に浮かべたり、正月飾りにあしらわれたりと、御蔵島の暮らしにおいて古くから慣れ親しまれてきた果実です。この「かぶつ」の魅力を発掘しながら、御蔵島ファンとの新たな繋がり、関わり方を作る取組「冬の御蔵島おすそわけプロジェクト」が考案されました。
このプロジェクトは、生のかぶつやその加工品をセットにした「冬の御蔵島おすそわけキット」を活用し、「島外の人との関係づくり」と「かぶつ活用に向けた消費者モニタリング」という2つの視点で行っていくものです。
「島外の人との関係づくり」については、ターゲットを2方向に設定しました。
1つ目は、すでに御蔵島を知っている人たち。特に、いつも「夏」に島を訪れてくれる熱心なイルカファンの方々には「冬」の島の魅力も知ってもらい、従来のつながりを深めることを目指します。
2つ目は、まだ御蔵島を知らない人たちです。前述の熱心なファンの方々から、島を知らない友人や知人へ、かぶつを「おすそわけ」してもらうことで、未来の潜在的なファン候補になってもらうのが狙いです。セットには、生果であるかぶつに加え、加工品である「かぶつ胡椒」もあわせて送ることになりました。
もう一つの視点である「かぶつ活用に向けた消費者モニタリング」については、 かぶつを受け取った人にインターネット上でアンケートをお願いし、かぶつの評価や新しい活用方法などを募集します。回答結果は、かぶつや御蔵島の魅力向上に向けた、今後の検討材料として活かしていきます。
取組はさらに発展していきます。
首都圏のなかでも新たなコミュニティの場として進化し始めている銭湯「BathHaus」(東京都渋谷区)や、11島の特産品やライフスタイルを紹介した「東京宝島商店at BEAMS」(東京都新宿区)とのタイアップも決まり、各店頭でも「おすそわけ」セットを配布することとなりました。
島のメンバーが総出で協力し合いながら準備を進めました。
準備作業は、おすそわけセットに同封する御蔵島の紹介フライヤーの制作から、国立公園に指定されている山で育った総量1,000個を超えるかぶつの収穫、島内の関係団体などへの情報発信協力の依頼、おすそわけセットの梱包作業など、多岐にわたります。
今後は、かぶつを受け取った方が実際にどのように工夫して使ったか等、アンケートから意見・活用アイデアを取りまとめていく予定です。