地域性をベースにした未来型産業「父島スタイル」の可能性を考える
父島では、島の成り立ちや文化などの観点から、島の未来を考える「父島みらい会議」が立ち上がりました。2020年12月までに実施された計4回の会議では、島が現在抱える課題を通じて、アイデンティティや守っていきたいものなどを話し合いました。(前回のレポートはこちら)
今回は、第5回、第6回の会議の様子です。
2021年に入って開催された第5回、第6回の会議では、これまでに話し合った将来目指したい方向性を踏まえて、父島らしい「文化」と、自然環境や社会インフラである「社会的共通資本」をベースにした新しい産業の形を「父島スタイル」と名付けました。
父島スタイルには、地域の商品・サービスを地域の中で消費し、循環させ、島内での需要や消費を高める「生活主義」という考え方が出ています。また、文化の伝承や、島内への告知も大切な要素です。これらが取組の3つの大方針として、「島内消費」「文化を伝える」「島の人への告知」というキーワードが参加者の中で共有されました。
そして、島の将来を考える上で欠かせないのが、観光地としての父島です。会議中には、持続可能な観光における世界的な動きや、「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」が紹介されました。
個別のディスカッションでは、島内消費については、「島で作られたものを島の人が喜んで消費していれば、島外の人も興味を持ち、結果的に父島のブランド化につながるのではないか」「農業が盛んな母島を含めて検討する余地もある」「最初は小規模でも、まずは一つ成功事例をつくることが大事」といった意見が出ました。
また、郷土芸能である小笠原フラや南洋踊り、ウクレレなど、島独自の踊りや音楽についても議論がなされました。「観光客が島で文化に触れられる機会が少ない」という現状に対しては、「小笠原は戦争による強制疎開で一度文化が途絶えてしまった。今こそ文化をつくり、これからの産業につなげていく段階なのでは」「収入につながる仕組みがあれば、演奏会などに出演する個人やチームが現れ、文化を先の世代に継続して伝えられるのではないか」といった意見も。
今後も引き続き、各メンバーが情報収集を行い、3つの大方針に沿って「父島スタイル」の実現に向けて取組を進めていく予定です。