若者が八丈島で体験する特別な日常が、未来への出発点。

東京の島々の魅力、その可能性を見つけ出し、発展させていく「東京宝島」プロジェクト。今回ご紹介するのは「八丈島ディスカバリーツアー」。八丈島の「自然」と「多彩な人々に出会う体験」を若者に提供することで、八丈島と若者をつなぎ、ともに成長していこうというこのツアー。今回は、その中心となっている原田口昂弘さん、大野和真さん、そして彼らとともにこのプロジェクトを進める持丸沙代子さんにお話を伺いました。

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八丈島での体験で見えてくる、
今の自分と未来。

―八丈島ディスカバリーツアーでは、どのようなことをするんでしょうか?

原田口さん:19歳から29歳までの若者が、八丈島での様々な体験を通して、八丈島、そして自分自身の未来を発見しようというのがこのツアーです。地方での起業に興味があったり、将来のロールモデルを探しているような大学生の参加が多いですね。到着してから移住者でもある僕と大野が住んでいる古民家に来てもらって、まずは、参加者同士、自己紹介やそれぞれの参加の理由、このツアーの目的などを確認してから、島全体を把握してもらうために足湯に行って海を眺めたり軽くドライブします。

その後は、島で一番大きいホテルの経営者の方からホテル経営や牧場の乳業、島ならではの経営の大変さやどのように工夫されているかなどのお話を聞き、回によって多少内容は変わりますが、地場産業の農家さんで観葉植物の刈り取りをしたり、椎茸栽培の見学をしたり。その他にも、お祭りやイベントなど日程があえば、その手伝いや現地で映像制作をされている方のアシスタントをさせてもらい、いわゆる東京じゃなくても、映像やいろいろな仕事ができるということ、島で働くというライフスタイルを体験します。

あとは、温泉に入りながら、八丈島の美しい景色や海の向こうの青ヶ島を見たり、釣りをしたり、島寿司を作って食べたり、八丈島にいるんだなって感じてもらう。それは大事にしてます。

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―8月、9月、12月と、すでに3回のツアーを実施されていますが、参加者のみなさんの反応はどうですか?

原田口さん:みんな、すごく新鮮!みたいな顔をしてました。自分の手や体を動かして何かをする、初めてづくしの体験で、かなり衝撃を受けたみたいです。

大野さん:事業経営や起業、地域活性に興味を持っている参加者が、島の事業者の方の話を聞いたり、イベントの手伝いを終えた後に「地方で起業するって、もっと簡単だと思ってた。舐めてました」と感想をもらしていたのも印象的でした。仕事って、パソコンで何かをするぐらいに考えていたのが、実際に話を聞いて急にグッと解像度が上がり現実味が出てきたんでしょうね。いろいろなものが見えてきたんだと思います。

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原田口さん:毎回、その日の体験があまりにも楽しくて、夜は話し込んでしまい気づけば朝になってた。そんなことが結構ありました。一方で、これまでやったことのない体験をたくさんしたことで「やっぱり自分は全然解像度が浅かった。もっといろいろな人の話しを聞いてみたい」という意識の変化もあったみたいです。

朝4時まで語り合い、興奮冷めやらずそのまま外に出て空を見上げたら、満天の星!がツアーの中で一番盛り上がったシーンだったかな。天の川がバーンと流れていて。ちょっと、ドラマみたいですよね。

-満天の星空!忘れられない経験ですね。ツアーの後は、何かイベントなどがあるのでしょうか?

原田口さん:後日、島で体験したことや自分の学びとなったことを発表してもらう報告会を都内で行っています。島から戻っていろいろと考えて、少し頭の中が整理されるのだと思いますが、これからの自分について、悩んでどうしよう?というよりも未来を良くするために俺は頑張るぞ!みたいなテンションになってました。

大野さん:この間、ツアー参加者のプチ同窓会みたいなものがあったんですが、その後も、参加者同士でお茶したり、ご飯に行ったり、みんな続いてるみたいで、ひっそりと八丈島東京支部もできていて僕も嬉しかったです。

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若者が少ないからこそ、
若者にチャンスがある。

―どうして、このようなツアーを企画したんでしょうか?そのきっかけを教えてください。

持丸さん:私も、結婚を機にこの島に来た移住者です。八丈島の子どもたちは、高校卒業後に島を離れてしまう、また離れざるを得ないため、16歳~29歳の若者が少ないんです。私も子どもがいるので、八丈島や子どもたちの未来のためにも、島へ来て一緒に島を盛り上げていってくれる移住者を増やそうと活動を始めて、彼ら原田口さんと大野さんの二人に出会いました。若者が増えることで島がどのように変わるのか、島にどのような影響があって良いことがあるのか、悪いことがあるのか。原田口さんと大野さんには、ツアーの運営も担ってもらっていますが、実際に八丈島の移住者として、実はその実証実験もしてもらっている途中なんです。

原田口さん:僕と大野は、会社を辞めてこの島に移住してきました。その時に、持丸さんにいろいろとサポートしていただいたのがご縁で、今回のツアーを担当することになりました。先ほど、お話があった通り八丈島では若者の人口が少ないんですよ。でも、だからこそ若者にとってはいろいろなことに挑戦できるチャンスの多い場所だと僕らは捉えています。

大野さん:移住って基本的にはいきなりすることはないと思うんです。旅行でたまたま行った土地がなんかすごい楽しくて、すごい人もいい!みたいな感じから、何回か足を運んでいくうちに「ここに住んでみたいな」そんな流れがあるんじゃないかと。その最初の出会いを、このツアーでなんとか八丈島に持ってきたいというイメージです。島の中のおもしろいコトやおもしろいヒトと出会う体験を通して、それが少しずつ関係人口をつくっていく。そのことを実際に検証していくのがこのツアー、僕らの役割だと思ってます。

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楽しい場所は、
自分たちでつくっていくもの。

―ツアーを始めたことで、何か感じている変化などはありますか?

持丸さん:ツアーを通して、お祭りや仕事に若い人たちが関係してくれたことで、島の大人達の意識も少しずつ変化しているように感じます。移住者や島と関わってくれる若者を増やしていくことが、島の未来にとってどれだけ大事かを感じてもらえたように思います。

大野さん:ツアーの参加者からは「どうしたら、大野さん、原田口さんみたいに楽しそうに生きられますか」とよく聞かれます。就職などを目前に控えた大学生にしてみれば、僕らの住んでいるこの八丈島がなんだか楽しそうなところに映るみたいですね。でも、それは逆で「どこかに行ったら楽しそう。じゃなくて、自分から楽しくなるようにつくっていくのが大事だよ」って答えてます。僕らにとって八丈島への移住は、キャリア選択の一つで、八丈島ならおもしろそうな仕事ができるかもしれないと思ったからです。八丈島にいるから楽しそう!って見えるかもしれないけど、いろいろなことを楽しんできた結果、今八丈島にいるっていう感じなんです。

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―このツアーの成果と今後に取り組みについて教えてください。

原田口さん:今回の八丈島での体験は、彼らにとって、これから先のスタート地点というか原点になったと思います。実際、プチ同窓会で会ったとき「悩んだ時に、あの八丈島で味わった特別な日常、あの3日間を思い出して、今自分はどうなんだろうって考える原点になっている」と言ってました。

ほかにも、ツアー中に移住について興味を持ち「どうやったら島へ移住できるのか」という具体的な質問も出てましたね。

持丸さん:彼らにとっての特別が、私達の日常なんですよね。不思議ですが。だからこそ、気軽に八丈島へ来て、島の素材にたくさん触れてその魅力を知って欲しいと思っています。週末にフラッと来て住むとか、長期休暇が取れたからカバン一つで行こうかなと思えるような、そのための住まいや仕事ができる環境を充実させていきたいですね。いろいろな機会を通して、八丈島に遊びに来てもらい、間接的にでも八丈島に関わってくれる人が増えれば、その先に移住があるのかなと感じています。

成果といえば、うれしいことに、このディスカバリーツアーに参加してくれた子たちが、来月、また島に遊びに来てくれることになっています。

―ありがとうございました。たしかに、誰かに楽しくしてもらうんじゃなくて、自分たちで楽しくする。いろいろなことに通じることですね。原田口さんと大野さん、そして持丸さんというサポート隊がいてくれたら、移住するにも心強いと思いました。今度は、このツアーからの移住者のお話しが聞けるのを楽しみにしています。