「第9回東京宝島会議」を開催!

2022年7月5日(火)、「第9回東京宝島会議」を開催しました。今回は約2年半ぶりの対面開催に加え、オンラインでの参加も可能なハイブリット式で開催。会議では他県の先進的な島の事例紹介と「東京宝島アクセラレーションプログラム」支援対象取組アイデアとして選定された12団体から、今年度の活動を紹介する発表が行われました。

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鹿児島県甑島(こしきじま)における多彩な活動を紹介

第一部は「他地域における地域活性化の取組事例」として、鹿児島県薩摩川内市の甑島にて活動されている「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」の代表取締役、山下健太さんが登場しました。山下さんは第8回東京宝島会議でもご自身の取組内容を紹介してくださいましたが、その際も参加者からたくさんの質問が出るなど好評。今回も期待に応えて再登場となりました。

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山下さんの活動は甑島での活動を中心としながらも、島と周辺の他の島々をつなぐパイプ役しての活動もしています。

今から14年前、自分たちのふるさとの風景を残したいと耕作放棄地を再生し、農作物の無人販売をするところから始まった活動は、次第に島の多くの人が関わるものとなり、現在では甑島島外からも大きな注目を集めています。

近年では、甑島に訪れる人も増加しています。特に豆腐作りや近所の商店でビールを買って夕涼みをする、といった島の日常の体験を、宿泊と一緒に提供するプログラムは人気となっており、「あそこの宿に行けば面白いところに連れて行ってもらえる」とリピーターも増えているのです。

しかし、観光地ではない島に観光客が増えることは、島民にとってのぞましい姿ではない可能性もあります。「観光客のための観光推進ではなくて、島民が島の行く末を考えたとき、どうありたいのか、それを観光というものがいかに支えるか、という構図の中で観光を進めなければいけない」という言葉は観光客受け入れのキャパシティが小さい地域においては参考になる言葉でした。

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後半は、鹿児島県内の他の島と連携して進めている「鹿児島離島文化経済圏」での活動についてのお話です。県民の10%が離島に住む鹿児島県内で、複数の離島の人々が一緒に島の未来を考えていく活動を4年前から開始しました。結果、島同士が協力して商品開発などビジネスを行ったり、イベントを行ったりと活動は多岐に渡っています。

参加者の皆さんからは、活動に至ったきっかけや仲間の集め方など多くの質問が寄せられ、「自分たちの活動の励みになった」というポジティブな意見が多数あがりました。

人口が少ない島という共通点を持ちながらも、島同士の連携をおこない、島の外からの応援団もたくさん得ている山下さんの活動には、東京宝島としての連携にもつながるヒントがたくさん詰まっていました。

選定された12団体の意欲的な活動計画

第2部は、東京宝島アクセラレーションプログラムの支援対象となった12団体からの発表です。今回は7団体が会場での発表、5団体がオンラインでの発表となりました。

1団体目は大島から「伊豆大島ミライプロジェクト」です。「大島のヒト起点で"学び対話し創発するツアー"の醸成」を取組アイデアとし、離島の各観光地域スポットを巡るだけではなく、その島で暮らす人と深い関係を構築できるツアーを作ることを考えています。そのために、関わる人たちがみんな創造的に考える機会を得られるワークショップをしっかりデザインし、展開できるファシリテーターを育成して、企画を試すモニターツアーを実施するところまでをやっていきたいという取組の内容が発表されました。

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団体代表の千葉さん:
「より深く島への関わりしろを生み出すワークショップの開発とワークショップを継続的に運営するファシリテーターを育成していくことで、島や関わってくださった方々の関係が継続的かつ持続的に動いていくような仕組みを作りたいと考えています。」

2団体目は式根島の「一般社団法人式根島エリアマネジメント」です。取組アイデアは「式根島アイランドワーケーションの勧め」で、式根島が複数の企業から定期的なワーケーション滞在先として選ばれるよう、誘致推進や地域経済の活性化を目指していきます。また、ワーケーションにより継続的な関係人口を構築して、不足している人材を確保することや移住定住につなげていくことが目的です。多くの人が式根島にワーケーションに来て長期滞在を希望しても家が無いため、宿泊施設と連携して長期滞在のためのプログラムをおこなうといったアイデアが発表されました。

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団体代表の下井さん:
「今実際に島にワーケーションとしてかなりの人が入ってきている実感があります。その方たちと関係人口の構築を図ることによって、不足している人材の解消につなげられたらと思っております。」

3団体目は「利島の特産品開発チーム」です。今回の取組アイデアは、「利島島民と特産原料で作る『たべるラー油」の開発」です。利島の産物である椿油、明日葉、島唐辛子を使用して食べるラー油を開発し、製品化していきますが、島民の方と試食会をしたり、アンケートをしたりすることで島民の方々と一緒に作るという意識をしたいと考えています。

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団体代表の加藤さん:
「目的が一番重要だと思っているのですが、1つは利島の素材に付加価値をつけて商品化すること。2つ目は島民に愛される商品にすること。3番目が商品を通して、利島の魅力を島外に伝えていくことです。商品を通じて利島はこんな島だよということを知っていただくことが重要だと思っています。」

4団体目は八丈島の「シン・七色八丈プロジェクトチーム」です。今回の取組アイデアは「七色八丈キャラクター開発とSNSによるブランド訴求」ということで、八丈島の観光資源のアイコンとなる「七色八丈」を擬人化するキャラクターを開発し、動画作成やSNSを通じた情報発信をしていきます。今まで八丈島では「七色八丈」として人的資源の魅力を発信してきましたが、今回の活動ではキャラクターによって「観光資源」の魅力も深掘りし、発信していきます。発表では、配信する動画のイメージについてもプレゼンテーションされました。

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団体代表の歌川さんとメンバーの持丸さん:
「キャラクターを軸に、八丈島の魅力的な人やその人たちが取り組む仕事の内容、八丈島に対する思い、八丈島の有名スポットや知る人ぞ知るスポットまで幅広いコンテンツを配信します。」

5団体目は青ヶ島から「アオガミライ」チームです。取組アイデアは「青ヶ島と未来を繋ぐWebメディア<アオガミライ>」の立ち上げとなっています。

現在青ヶ島の人口は166人ですが、減少傾向にあります。それに歯止めをかけ、人口を少しでも増やしていくためにWebメディアによって島民の青ヶ島に対する思いや未来への展望を聞いて発信し、島内外で青ヶ島と関わりたい、繫がりを持ちたいファンに向けたイベントを開催していきたいと発表しました。

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団体代表の佐々木さん:
「青ヶ島は日本で一番人口が少ない自治体で、絶海の孤島と言われていますが、やりたいことをやろうと思ったら、いくらでもチャンスがある場所なんです。青ヶ島がいいと言って来てくれるのはなぜかと考えると、結局人だと考えているので、 青ヶ島の島民インタビューを掲載して魅力を伝えていこうと思っています。」

6団体目は八丈島の「七色八丈で『Re:TABI』」の発表です。取組概要としては、新しい旅の創造と提案ということで、八丈島の閑散期の山の魅力を「利他」の観点からブランディングし、ガイドアプリに落とし込んでいくことによってこれからの旅を提案していきます。

今回のキーワード「利他」とは「他者と共に生きるために『つながり』を持続的に深めること」。八丈島が持つ豊かな山を通年の観光資源として発信していくために、スマホを使ったガイドアプリを活用しながら、企業とのパートナーシップやモニターツアーに発展させていくことを予定しています。

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団体代表の魚谷さん:
「人と八丈島の間で起こっている化学反応や相互作用が物語として伝わるのではないかと考えています。人と島との相互作用で、多くの人は利他的なことを考えていました。『利他』をInstagramで発信しつつ、旅の内容にもつなげていくことを考えています。」

7団体目は「東京宝島チーム大島」です。取組アイデアは「東京宝島 伊豆大島『プロトコール』プロジェクト」。『プロトコール』とはバレーボールの試合開始前の準備を指しています。

一流アスリートを招いた島の子供たちとのバレーボールイベントによって影響力あるアスリートから大島の魅力を発信してもらうことや、バレーボールをやっている学生などにモニターツアーに来てもらうことによって、バレーボールを通して大島への関係人口・交流人口を増やすことを目的としています。

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団体代表の小林さん:
「大島のバレーボールを支えてくださっている方たちと、新しく協力してくださる方を募りながら大島をスポーツツーリズムの目的地として、またスポーツ以外の魅力も含めて、スポーツ実施者層に広めていきたいと思っています。」

このあとはオンラインでの発表に。8団体目は「神津島高付加価値プロジェクトチーム」です。取組アイデアは、「責任ある観光と既存ツアー高付加価値化の実証実験」です。
神津島に来る人は7、8月の来島者がほとんどで閑散期の観光客誘致が課題となっています。今回は主に日本に住んでいる外国の方を対象に、事前講義で神津島の魅力や現状課題を共有し、星空クルーズなどのモニターツアーを通じてツアーのブラッシュアップを図っていきます。

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団体代表の田中さん:
「モニターツアーの来島前に、現状や課題を共有し、事前に神津島の知識を学んでから参加してもらいます。参加者には課題解決に向けたアイデアを考えていただき、ツアーへ積極的に参加してもらうことで、一過性ではない質の高いモニターツアーを実施します。成果や体験は設計してから発信し、SNSでプロモーションします。その結果、責任ある観光が実現することによって、訪れる人と受け入れ側の双方に喜ばれる滞在を目指したいです。」

9団体目は「青ヶ島還住太鼓」です。今回の取組アイデアは「青ヶ島の郷土文化発信を通じたブランディング事業」で、取組としては「ハロー青ヶ島」公式Twitterの運用と、郷土芸能交流会、青ヶ島シンポジウムの開催を予定しています。

島内のお祭りなど、地域でコミュニケーションを取る機会が作れない中、青ヶ島に他の島の伝統芸能を招聘し、島内で発表するとともに島外にオンライン中継で楽しんでもらう「郷土芸能交流会」や、都内で青ヶ島の文化や芸能に親しんでもらう「青ヶ島シンポジウム」などを通して青ヶ島の文化を発信していきます。

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団体代表の荒井さん:
「青ヶ島には自然もあるし、人との触れ合いもありますがどちらか一方ではだめで、人の営みと自然の営みが重なり合うところに青ヶ島独自の郷土文化というものがあると思います。そういった郷土文化を感じ取れる瞬間を自分も体験したいし、いろんな人に伝えていきたいなあと思っています。」

10団体目は父島の「訪日外国人向けロングステイ推進プロジェクト」です。訪日外国人を対象に10日以上の滞在でも父島での仕事に支障をきたさない環境を作り、ロングステイの外国人来島者を増やすことが目的です。

現状ではワークスペースの案内なども日本語でしか提供されていない場所が多い中、英語圏の訪問客を対象に、ロングステイのマーケットリサーチを行いながらプログラム開発と島内の外国人向け環境整備を行っていきます。プログラム開発後は外国人のインフルエンサーにモニターツアーを実施。外国人に向けて広く情報発信できるWebの制作や、島での移動手段となる電動バイクの実証実験にも取り組んでいきます。

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団体代表の中林さん:
「SDGSを目指した海外のロングステイプログラムをリサーチ・分析して、父島らしい持続可能なロングステイプログラムを作っていきたいです。」

11団体目は「御蔵島郷土料理保存会」です。取組アイデアは「御蔵島郷土食材・料理を持続可能な仕組みで後世に伝承していくプロジェクト」です。

御蔵島では今までにも島の伝統的な郷土料理のレシピ化や伝統的食材のアレンジレシピを考えてきましたが、今年は島民の方々にも参加してもらってより広くレシピ化をするほか、フードコーディネーターと連携し、日常に取り入れやすい形にアレンジしたレシピを開発する活動も行っていきます。将来的には島の宿や飲食店での提供、島のイベントなどで継続的に郷土料理が提供されるように、島の人々に広げていくことを目指しています。

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団体代表の井上さん:
「活動方針としては、既存の御蔵島ファンとの関係を太く濃くしていく活動であること、御蔵島にしかないモノ・コトを日常化に近づける取組であること、次の世代に受け継ぐための持続可能な活動になっていること、の3点を考えて郷土料理伝承活動をおこなっていきたいと思います。」

最後の12団体目は「父島みらい会議」です。父島のブランドコンセプトである「ありのままにいのちが輝く、別世界を生きる島」の実現に向け、毎月開催する「父島みらい会議」と「多様性」をテーマとした動画制作・発信により、父島が考える持続可能な観光地経営の在り方をメッセージとして発信します。

また、来年1月には「父島みらい会議シンポジウム」の開催も予定しており、島民に広く父島みらい会議でのディスカッション内容を説明し、新しい仲間を増やしていきたいと考えています。

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団体代表の深澤さん:
「先端地域の視察による学びも大事だと考えています。私達の目指すような島作りを実際にも実践している島が多分国内でも何ヶ所もあると思うので、そういったところに出向いて学び、大いにコミュニケーションをとって仲良しになりに行きたいと思っております。」

発表の途中では参加者による質疑応答も行われ、各団体の今後の展開について期待を感じさせるやり取りが交わされました。

最後は山下賢太さんより、「取組については目的と手段を混同しないようにして、なぜやるのか、という点や自分たちの島だからこそ伝えられる『らしさ』を考えていただけたらと思います。また、自分たちの言葉だけではなく相手に伝えていくためのコンセプトの作り込みをて丁寧にしていくと、どの島ももっと面白くなっていくなという期待をすごく感じました。」と島の皆さんに対してエールが送られました。

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東京宝島の皆さんの意欲的な発表から、今後どのような活動が進んでいくのか、とても期待が膨らむ会議となりました。

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