「第8回東京宝島会議」を開催!

2022年2月9日(水)、「第8回東京宝島会議」が開催されました。今回も新型コロナウイルス感染拡大の影響により、東京都心と東京宝島各島をオンラインで中継して実施しましたが、各島からの取組発表とともに、他地域の島における意欲的な活動についての講演もあり、今後の各島での活動にあたり、前向きな機運が高まる内容となりました。

甑島の事例には希望がいっぱい

会議の前半では、他エリアにおける事例紹介として鹿児島県薩摩川内市にある甑島で地域活性化に取り組んでいる山下賢太さんの講演がありました。

甑島列島は高齢化率が50%を超えており、人口が減少している地域です。しかし、山下さんが立ち上げた「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」は設立して10年経ち、若者、女性、Iターン者が活躍する場所になりつつあります。甑島の活動は多くの島外の人にも注目される存在となっているのです。

しかし、山下さんがUターンして島に戻った後、最初から活動が順調だったわけではありません。「山下商店」で豆腐を売りながら島内をまわることで、島民の方から次第に話を聞かせてもらえるようになり、多くの人が助けとなってくれたり、自らの困りごとを話してくれたりして、関係が深まってくるようになってきました。

当初、甑島には観光で来る人などいないと、山下さん自身も考えていましたが、山下さんたちの活動が伝わるにつれ、訪れてくれる人が増えてきました。山下さんは世界の色々な街を訪れる機会があり、言葉や食事、文化がその街らしさを作っていると感じていましたが、甑島に帰ってきたとき何もないと思っていた甑島に「らしさ」は全てあるということに気づいたのです。そんな経緯から、甑島では「頑張らない観光」を目指しています。新たに名所や名物を作らなくてもありのままの体験が観光資源になるということがわかったのです。

地域としての新しい取組も行っており、そのひとつが2016年に始めた「フィッシャーマンズフェス」です。山下さんは漁師ではありませんが、漁師さんに誇りを持って暮らしてほしいという思いから、漁師さんを主役としたお祭りを立ち上げました。

島内で続けてきた取組は現在、「鹿児島離島文化経済圏」(リトラボ)という形で有人離島27島を連携させた活動にも発展させています。今後は、リトラボを鹿児島の離島と全国の企業のコラボレーションが生まれるプラットフォームとし、島を守り育てるためのファンドを作りたいという目標を語って締め括りました。

他地域の島でこれだけ活発な活動が行われていることに多くの参加者からは「刺激を受けた」「ぜひ今後とも交流して学びたい」といった意見が続出し、活発な質疑がおこなわれました。

各島の取組発表に活発な意見交換

続いては、各島からの活動発表です。今年度も後半となり、具体的な活動結果が見える報告が多くありました。

1島目は八丈島です。 「自分の色を取り戻す、七色の魅力に輝く島」をブランドコンセプトに、人の魅力の発信と島外の八丈島ファンとの絆づくりを進めてきました。SNS(Instagram)アカウント「@7iro8jo」については、ハッシュタグキャンペーンを通じてさまざまな八丈島の姿をSNSに投稿してもらい、新たな八丈島ファンをとの接点を作る取組を行いました。

閑散期の島を楽しむ島内周遊ツール「七色八丈パレット」の企画では、八丈島のコアな魅力を知り、島の方と仲良くなれるような旅のプログラム「七色八丈ミッション」を企画しています。

地域コーディネーターの田代さん:
「来年度はファンコミュニティのさらなる拡大を目指して、SNSの更なる活用や、七色八丈ミッションの拡大や強化を行っていきたいと思います。」

2島目は父島です。
ブランドコンセプトは「ありのままに命が輝く、別世界を生きる島」とし、父島に家族になりに来てくれる方とのつながりを深める活動に取り組んでいましたが、コロナ禍の状況を鑑みて観光客へのメッセージ発信は控えている状況です。

そのため、現在は父島らしい文化や暮らしの魅力を動画を通じて発信しようと試みています。撮影メンバーの訪島ができず思うように進まない状況ではありますが、訪島ができる状況になり次第、動画制作を再開したいと考えています。

地域コーディネーターの西本さん・メンバーの深澤さん:
「観光客が靴底を綺麗にすることで外来種が入るのを防ぐ『シュッシュ、コロコロ』を父島の環境問題への取り組みとして世界へ発信しようと考えています。来年度もおがログ、父島みらい会議の取り組みについて継続し、動画はシリーズ化していきたいと思っています。」

3島目は神津島です。ブランドコンセプトは「当たり前の奇跡に気づく、豊かな水と生きる島」で、今年度は「水」や「漁村文化」の素晴らしさを言語化するための情報整理を行っています。

地域コーディネーターの中村さん:
「今年はあと2ヶ月で神津島らしさの言語化をすすめ、島の人々が共通認識を持てるように議論していきたいと思います。」

4島目は母島です。ブランドコンセプトは『みんなが「らしく」暮らせる母なる島』とし、島内外のファンづくりのため、島の現在・未来について話し合う場づくりをしています。

話し合いの場のベースとなる「母島部活堂」はなるべくリアルで実施し、島内の別グループの方々や観光協会の方々との対談を行いました。また香川県の豊島、北海道の天売島など他地域交流を続けることで心の活性化が行われていると感じています。

地域コーディネーターの宮城さん:
「来年度以降は話せる場をさらに作り、他地域交流を進めていきたいです。本日お話があった甑島とも交流したいと思いました。来年度に向けて色々と挑戦していきたいと考えています。」

5島目は青ヶ島です。
ブランドコンセプトは「自力に目覚める、絶海絶景の島」です。コロナ禍で来島してもらうアクションが難しくなり、観光客に対してどうやって接点を持ったらいいかわからないという溝を埋めたいと思い、「ハロー青ヶ島」リーフレットの配布を実施したり、Twitterでもハッシュタグ「#ハロー青ヶ島」を活用したりして投稿を呼び掛けました。

2022年1月には青ヶ島オンライン交流会を開催し、しばらく会えていない常連さんとYouTubeライブによる交流を実施しました。コメントも多くいただき、述べ再生回数は1000回を超える盛り上がりを見せました。

地域コーディネーターの荒井さん:
「来年度はオンライン交流会でいただいたコメントを参考に、コアな青ヶ島ファンとさらなる交流を深めたいと思います。」

6島目は御蔵島です。ブランドコンセプトは「すべてが特別になる、あなたを宝物にする島」。今年度は郷土料理の伝承をテーマに、島の先輩方への郷土料理へのヒアリング、郷土食材の収穫や、試作会での郷土料理の再現などを実施してきました。

郷土料理の歴史はレシピサイト「クックパッド」での掲載を目標として、御蔵島特設ページのアカウントを取得し、掲載準備を進めています。

地域コーディネーターの井上さん:
「郷土料理の再現は本当に大変な作業で、現在の生活ではなくなってしまっているのも納得しました。しかし郷土料理レシピを整理して後世につなげていくことが今後の糧にもなるので続けていきたいです。来年度は今年できなかった郷土料理を作り、クックパッドの掲載をさらに良いものにしていきたいと考えています。」

7島目は式根島です。ブランドコンセプト『働く場所が、遊ぶ場所。新しい「なつかしい」をつくる島』をもとに活動を継続してきました。

具体的には移住・定住を見据えた長期的な関係人口の構築を目標とし、ワーケーションプラン「式根島アカデミー」を磨き上げてきました。
11月には新島村と提携関係にある港区・渋谷区の企業と連携して、5泊6日のワーケーションを実施しました。島にくると誘惑がないので仕事に集中しやすい、規則正しい生活で体が整った、合間に島を歩いたり温泉に入ったりして気分転換ができた、Wi-Fi環境もとても良いなど様々な意見をいただくことができました。

地域コーディネーターの下井さん:
「来年度は企業向けのプログラムのブラッシュアップ、他の事業と連携したワーケーションモデルなどを進めていきたいです。合わせて長期的な関係人口構築に向けて企業向けトライアルや渋谷区・港区の連携を進められればと思います。」

8島目は大島です。「ちょうどいいが見つかる、行きつけになれる島」をブランドコンセプトに、大島のシンボル「アンコさん」を島内外に大島の魅力を伝え、体験機会を提供するための活動を行ってきました。

今年度は大島高校産椿油をアンコさん姿でPRしたり、アンコ文化保存会主催のイベント「島の宝・アンコ展」への協力、取材を行ったり、東京都の中小企業組合が中心となって出店する「組合まつり」への参画、海外ルーツのあるインスタグラマーとの「椿まつり」における連携を実施しています。

地域コーディネーターの千葉さん:
「伝統的なアンコさんの姿を伝えたいと地元の金融機関や教育機関と連携して様々な取組に発展させてきました。大島のシンボルであるジオパークなどもアンコさんと密接に結びついているので、効果的な事業に発展させていきたいです。」

9島目は新島です。ブランドコンセプトは「新しい、でつながる島」で、当初はベロタクシーの活動を推進を進めていましたが、コロナ禍により思うように活動ができないことから、メッセージ動画の作成にゴールを変更。

ベロタクシーの取組への想いが島の人たちに伝わるよう作成しました。

発表者の西胤さん:
「新島出身の若者が僕達の取組に賛同し、2年後のUターンに向けて準備を進めてくれているのは明るい兆しです。今後若者たちが新島に帰ってきてくれる可能性も鑑みて、身近にいる人々に正しく活動を伝えられるようにしていきたいと思います。」

10島目は利島です。「恵みを満喫、幸6000年の里島」をブランドコンセプトに、利島産の「島の人が愛せる・自慢できる商品」を開発しました。

島民への試食や、商品名、パッケージ、価格などを決定を経て、「利島の明日葉椿油ソース」という名称で発売。結果、お披露目となった青山ファーマーズマーケットでは100個完売、2022年2月19日にはアソビューオンライン体験を実施するなど島や商品を周知する活動を行っています。

地域コーディネーターの長谷川さん:
「来年度の活動としては、『利島の明日葉椿油ソース』については島内への周知と流通の拡大を考えています。同時に商品のシリーズ化に向けて新しい商品のアイデアを実現していきたいです。」

各島の発表の後には他の島の方から質疑があり、自分の島で活かすにはどうすれば良いかや、苦労した点の共有、自分たちも体験ができるかなど活発なやりとりがされました。

最後は東京宝島推進委員会の山田委員長よりコメントがありました。

「コロナ禍でリアルのやり取りが難しい時世ではありますが、オンラインでつながることができるのは素晴らしいことです。途中で方針を臨機応変に変えながら、うまくバーチャルを利用されていると感じました。
これからは島の中と外とのつながり、世代間のつながりが重要となってきます。また『パーパス』すなわち『存在意義』という言葉もキーワードとなるでしょう。それぞれの島に『存在意義』、求められていることがあり、どのように答えていくかを考えていただきたいと思います。」

東京宝島の皆さんが今年度積み上げた成果に刺激を受けながら、さらに島のためにどのようなことができるだろうと考えさせられる良い機会となりました。

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