「東京宝島ブランディング報告会」を開催!

2020年2月18日に、東京・丸の内で開催された東京宝島ブランディング報告会。東京の島全11島が議論を重ねてきた取組アイデア発表の場に、54社81名の企業関係者が集まり、各島の事業者との交流や取組アイデアの実現に向けた意見交換が行われました。その模様をレポートします。

11島が島の魅力や取組アイデアを発表

東京宝島ブランディング報告会には、各島の取組に関心を持つ54社が集まりました。新島、大島、三宅島、八丈島、神津島、父島、利島、式根島、御蔵島、母島、青ヶ島の順に、各島がこれまでの島会議等で議論した島の魅力やブランドコンセプト、取組アイデアなどの発表を行いました。

1島目は「島の仲間になれる『つながり』」をブランド価値に据えた新島。まずは新島を知ってもらおうと、映像で新島を紹介。島に来て欲しい人物像を「島を自分の拠り所にできる人」とし、映像にも出てきた新島に点在する宝物(ヒト・モノ・コト・バ)を楽しくつなぐために、島内メンバーが案内役とドライバーを兼ねる新たな体験プランを作成し、企業との連携を図る取組アイデアを発表しました。

会場からは、島の交通への企業の関わり方に高い関心が寄せられ、発表後にはさっそく各社との意見交換がはじまりました。

このほか、空き地活用のポータルサイトを運営している企業からは、車中泊を行える駐車場の登録をして未利用地を活用するウェブやアプリの提案がありました。また、アウトドア用品メーカーとは格好良いチームウェアの製作について話が出たほか、デジタル観光ツアーアプリの導入、都心の飲食店等と連携したイベントの開催など、取組アイデアに応じた様々な企業との交流が生まれました。

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2島目は、都心からもっとも近い大島。ブランドコンセプトは、都心からの近さを最大限に生かした「行きつけになれる島」です。来て欲しい人物像は、「都心で働き、女性誌のライターとしても活躍する30代都心在住の都会的な女性」と設定。

2018年度の島会議の議論をもとに、2019年度は「行きつけになれる島」を具体化した体験コンテンツや島民との交流を盛り込んだモニターツアーを、日本人向けとインバウンド向けにそれぞれ実施しました。参加者の満足度は高かったものの、継続を考えると運営側の負担に課題が残りました。今後さらに関係人口を広げていくために、観光の枠を超えて、企業研修や教育事業も視野に入れながら「行きつけになれる島」を模索していきます。

「行きつけになれる島」というブランド価値に魅力を感じた企業も多く、意見交換では、フィールドワークを行うインターンの派遣、人材教育プログラムの開発、体験メニューの旅行商品化、温泉施設の活用など、企業からの様々な提案がありました。

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3島目は三宅島です。噴火の歴史とともに歩んできた三宅島は、2018年度の島会議の中で「火山」があるからこそ、自分たちの今の暮らしがあることに気付き、「島の宝=火山」として会議を進めてきました。その考えの元に「火山と共に過ごす島」を楽しんでいただくための仕組みを考えてきました。また、三宅島に来て欲しい顧客像として、「20代〜30代前半の独身女性」や「30代後半の子育てファミリー」で、「あるがままの自然を魅力と感じている人」を設定しました。

取組アイデアは、「五感を呼び覚ます」ことを目的に火山を歩き、火山を学び、火山を食すこと。取組アイデアの実現に向け、観光スポットを紹介するデジタル観光ツアーアプリや写真プリントサービスの導入に向けた取組経過を発表しました。

発表後は、体験型観光の情報を発信している企業やアウトドア用品を扱う企業などから火山を活かした体験等に関する質問がありました。対応した参加者は、島でのネイチャーガイドの需要の高さに言及する一方、三宅島は自然体験だけではなく、「防災」を学ぶ場所としても重要な役割を果たせるのではないかと企業へ説明しました。

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4島目は「七色八丈」(自分の色を取り戻す、七色の魅力に輝く島)をコンセプトとした八丈島。30代女性で芸術系のクリエイターが、都会での生活に疲れを感じ、八丈島の自然や人との触れ合いからインスピレーションやエネルギーを得て、創作活動をリスタートするというストーリーを描き、取組アイデアを検討してきました。

プレゼンでは、来店したお客様に島の魅力を伝えるため、島外の飲食店に島の写真集を設置し、店舗オーナーに島のインフルエンサーとしての役割を担ってもらうアイデアや、インスタグラムを活用した効果的な魅力発信の仕掛け、さらには島への旅に必要なアウトドアギアのサブスクリプション化構想を発表しました。

八丈島のメンバーは、カフェの開業支援などを行なっている企業と、写真集を置く場所としてのカフェの条件などを意見交換。多くのシェフと独自ネットワークを築いている企業とも写真集を置く具体的な飲食店の候補を話し合いました。また、アウトドアギアのサブスクリプション化については、アウトドア用品を扱う企業から、「手ぶらで参加できるアウトドア」という視点は可能性がありそうだというご意見をいただきました。

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5島目の神津島は「当たり前の奇跡に気づく、豊かな水と生きる島」。星空保護区の認定を目指す行政の取組や、日本在住外国人を対象とした、夏のハイシーズンを除く体験型旅行商品の企画について発表がありました。

2018年度の島会議の議論を基に2019年度に実施した外国人向けモニターツアーでは、神津島の水を取り巻く自然環境や伝統文化を伝えるべく、漁村文化体験や湧水スポット巡りなどを盛り込みました。モニターツアーでの検証を経て、神津島のメンバーだけでツアーを実行することの難しさを実感。その他、金目鯛や農作物などのブランド化といったアイデアも挙げられ、取組の実現に向け、会場の企業に協力を呼びかけました。

参加した旅行会社等に対しては、観光の閑散期に星空ツアーの実施を推していきたい旨を伝えるとともに、体験プログラムの販売方法などについても意見交換を行いました。また、多言語化対応している予約フォームやインバウンド向けのメディアなどを紹介いただき、外国人旅行者の取り込みについても意見を交わしました。

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6島目は船で片道24時間かかる父島。「ありのままにいのちが輝く、別世界を生きる島」をコンセプトに据え、「小笠原に、家族になりにくる人」を来て欲しい人物像と設定しました。自然豊かな父島らしく『持続可能な社会を目指すプロジェクト』を共通のテーマとして、2つの取組アイデアを発表しました。

1つ目は、山を守り、海を守るための環境保全プログラム。生態系や外来種駆除、海洋ゴミの分類やビーチクリーンを通じて自然の循環を学ぶ体験型のプログラムです。2つ目は島民と観光客のコミュニケーションや来島のリピーターの満足度向上を目的とした「Bonin Traveler's Log(ボニントラベラーズログ)」の冊子制作。入出国を模したスタンプの押印や、自分仕様にカスタマイズできるようにすることで、オリジナルの一冊が生まれます。

父島のプレゼンテーション後、複数の企業からチームビルディングのための環境保全プログラムや、企業研修の旅行商品、豊かな自然を活かしたコンテンツ、トラベラーズログの内容など、取組アイデアに関する様々な問い合わせがありました。また、アウトドアの出版社から、トラベラーズログについて連携できることがないかといった打診もありました。

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7島目となる利島(としま)は「恵みを満喫、幸6000年の里島(さとしま)」をブランドコンセプトにかかげました。取組アイデアとして、島外に居酒屋やアンテナショップなどの拠点を作り、利島の魅力発信を行うことを検討してきました。しかし、いきなり拠点を作るのはハードルが高いため、まずは利島産品を使った新たな商品開発や、島外の既存飲食店や小売店と連携して利島産品を発信していきたいというこれまでの議論の経緯を説明。キハダマグロやカツオの生ハム、はばのりの炊き込みご飯の素、にぼし餅など新たな産品のアイデアはたくさん出ており、一から相談できるパートナー企業を探していると会場に呼びかけました。

利島の取組に関心を持った飲食店・商業施設のプロデュースを行っている企業や料理研究家の方などと、商品開発から地域の巻き込み方法、商品開発後の販路まで幅広く意見交換。例えば、缶詰にしてペットフード、離乳食、介護食にすれば規格外品も有効活用できるなど実践的なアイデアの紹介も受け、今後の継続的な協力についてもお願いしました。

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8島目の式根島は船の欠航により、急遽オンラインでのプレゼンテーションとなりました。式根島のブランドコンセプトは「働く場所が、遊ぶ場所。 新しい『なつかしい』をつくる島」。そして、個性あふれる島民、温泉、美しい自然など、「古き良き日本の島」があることを式根島のブランド価値として、取組アイデアを練りました。

島に来て欲しい人物像は「ワーケーションをしながら移住先を探している人」。そして取組アイデアは「コワーキング」と「ワーケーション」の造語である「CoWorkation PROJECT」と題して、島に仕事を作り関係人口を増やすことで島の魅力に気づいてもらえるように、「新事業」を起業する人や起業・事業開発などをサポートする事業の立ち上げを進めることです。

地域で働きたい人と受け入れたい企業・自治体とのマッチングを行なっている企業との意見交換では、関係人口を増やすための支援策を話し合いました。その他、デジタル観光ツアーアプリの導入、農業に関する地域活性化ビジネス等の紹介を受け、式根島での可能性を探りました。

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9島目の御蔵島は「『特別感』を感じてもらえるような体験ができる島」。島民と調和できる方々と島の資源を活用し、一緒に島の未来を作っていくことを目標としています。現在はイルカウォッチングを目的に来島する人がほとんどですが、これからは島の歴史や文化、慣習を尊重し、島の方と調和できる人、スキルのある人たちにも来て欲しいと考えています。

取組アイデアは、「誰でも集まれる場所作り」と、人が住んでいない旧集落にある「南郷山荘」の活用です。既存の施設を生かすことで、初期費用を抑えて持続可能な取組としながら、来島者に島ならではの魅力を体感してもらうよう検証を重ねていきます。

御蔵島は、南郷山荘を活用するアイデアとして、企業のオフサイトミーティング(※)や研修、ファミリーキャンプについて複数の企業と実現可能性について意見交換しました。また、バンやキャンピングカーを活用した車中泊、副業人材のマッチングツアー、島民同士のチームワーク研修などの提案もありました。
※職場から離れた非日常の環境で行うミーティング

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10島目、母島は「みんなが『らしく』暮らせる、母なる島」をブランドコンセプトとしました。来て欲しい人物像は「人間らしい暮らしの本質を求めている人々」です。「島内外に『母島のファン』を増やす」ことを目的とした島外の視点も入れながら母島の現在・未来について継続的に語り合う『場』作りを進める、「母島部活堂」のアイデアを発表しました。

立場や職場、年齢を超えた人が集まり、母島の良さや課題を見つめ直し、語り合う「場」。来島者をも巻き込み、ファンを増やすことで地域力上げ、人を通じて母島の魅力を広めていきます。

プレゼンテーションの後は、チームビルディングや組織の活性化を専門としている企業や、屋外のフィールドで研修を行う企業が訪れ、母島が考える「場」をより活性化させるための方策について意見交換を行いました。出席者からは、母島からこの活動を他の島にも広げていくことができれば、といった声も出ました。母島は取組アイデアの実現に向けて、着実に準備を進めています。

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最後は青ヶ島の発表です。島会議を重ねる中で、閉ざされていることで自然、暮らし、人と人の関係性、特別な想いが生まれることに気づきました。そして、青ヶ島の人々が出会いたい人は「自然、人、文化を大切にし、楽しむ心を持った人」と発表。取組アイデアは、「ドローン空撮を有意義に活用した交流人口の創出」「青ヶ島に来島してくれた人の都心での交流会」の2つです。ドローン空撮は、飛行ルールやガイドラインを整備したうえで、島側が理想とする映像作品を提案し、それに答えてくれる撮影者(操縦者)を募り、島民との交流を含めた撮影・映像制作の機会を設けるなどして、交流人口の創出に役立てます。

意見交換には、世界での動画撮影をしていて今後は地域の物語を撮影しようと検討中の企業、ドローンを扱う人が集う団体、ドローンメーカー等が参加しました。取組アイデアを共有できる企業と、実現に向けてコミュニケーションを深めます。

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終了時間いっぱいまで意見交換の途切れない各島のブース

様々な魅力を有する11の島々の可能性を感じた企業との熱を帯びた意見交換は、終了時間いっぱいまで続きました。社員研修などを手がける企業の担当者は「研修を東京の島でという選択肢を持てた。例えば大島の「行きつけになれる島」など、島側の提案を生かしながら実現をできれば」と発表を振り返りました。

本イベントに来場した様々な企業とのご縁や、いただいたご意見、アドバイスを積極的に活用し、各島は今後も取組アイデアの実現を目指し取組んでいきます。