「第1回島会議」大島で開催!

東京宝島事業と島会議について

2018年からスタートした東京宝島事業。東京の島々が持つ素晴らしい景観や特産品、文化などを、これまで以上に有効活用して更なる魅力拡大を図ることを目的に、東京11島の住民の方々が主役となり「東京宝島ブランド」を作り、磨き上げ、広く発信し、島の高付加価値化を実現しようという取組です。この事業の一環として、各島(2018年度は大島(おおしま)・神津島(こうづしま)・三宅島(みやけじま)・八丈島(はちじょうじま)にてブランド化に向けた議論を行う場「島会議」を実施。それぞれの島で、様々な取組をされている方にお集まりいただき、2018年度内で5回の島会議を開催します。

9月19日、大島の神達(かんだち)にある元ホテル椿園「新町亭」で第1回の「島会議」が開かれました。その模様をレポートします。

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「東京宝島」事業ガイダンス

「島会議」は、島を支える事業・産業に関わる人たちや、日頃から島の活性化に取り組む住民が集まり、領域の垣根を超えて、島のブランド化について話し合う場。2018年度からスタートした東京都の「東京宝島事業」の一環として、年5回の実施を予定しています。

「島会議」では、それぞれの島の住民自身が自らの島の宝を見つめ、議論や共有を進めていきます。また、それだけではなく、都心でのフィールドワークを通して学び、必要に応じて外部の専門家の協力も得ながら、これからの島づくりを考え、島のブランド化・高付加価値化を目指すという、これまで東京の島々で行われてきた地域振興事業とは異なる取組となります。

9月19日、大島の神達にある元ホテル椿園「新町亭」で、第1回島会議が開催。ゲストハウスや自然ガイドなど観光業、農家や漁業関係者など一次産業の担い手、島の事業をサポートする金融機関など、様々な業種の19人のメンバーが集まりました。

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はじめに島会議開催の挨拶があり、事業を担当する東京都 総務局 行政部 池野大介事業調整担当課長が「東京の島しょ地域には様々な魅力があるが、地理的要因等から、それらを十分に活かしきれていないという側面もある。そうした課題も踏まえ、島しょの宝物に付加価値をつけていくための戦略を練っていくことが、この会議の目的の一つ。その主役は皆さん自身。専門家によるバックアップもしていくので、是非この場を活用し、島全体を盛り上げていく取組として欲しい」とメンバーへ呼びかけました。続いて、事業のガイダンスとして、事務局より島会議の目的や年間の会議の流れを説明後、アイスブレイクへ。

接点のなかった住民同士を結んだ「他己紹介」

島会議の話し合いを始める前に、普段はなかなか話すことのない、それぞれの活動の背景にある想いなども共有できるよう、アイスブレイクとして自己紹介ならぬ「他己紹介」の時間を設けました。

他己紹介では、会議メンバーが3人ずつに分かれて7組のグループになり、メンバー同士がお互いのことを質問し合い、後ほど全員の前でお互いを紹介します。

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集まったメンバーは名前は知っているけれど、どこに住み、何の仕事をしているか分からない、といった今まで接点のなかった異世代の組み合わせが多く、中には「はじめまして」と挨拶を交わすグループも。

今すぐ試してみたい「コラボレーションアイデア」

7つのグループ毎に、「他己紹介」と併せて「これからの島をもっと魅力的にするためにどうすればいいか」というテーマで、3人それぞれ異なる事業分野を活かしたコラボレーション企画を考え、発表してもらいました。

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「農業と宿泊、アイスクリーム製造という、それぞれの領域を活かして、農園でできた野菜を宿泊施設にて料理として提供」「大島で見ることのできるハンマーヘッドシャークの焼印付き牛乳煎餅を製造。広告宣伝を観光協会が担当し、お土産としてダイビングスポットなどで販売」「ホースセラピーや漁師のレクチャー付きで釣果が食べられるアクティビティと宿泊をセットにしたツアー企画」「金融機関のサポートを受けつつ、ガイドとカフェを連動させた観光分野のコラボレーション」など、メンバーの専門性や今後取組みたいことを反映した具体的なアイデアが披露され、大島での他業種連携の可能性が感じられました。

島の魅力を編集するブランディング。先行事例も紹介

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島会議の話し合いに向けた準備運動としての他己紹介を終えて、島会議の目的である「島のブランド化」について意識共有するため、事務局より「ブランド」や「ブランディング」についてプレゼンテーションを行い、具体例として他島での取組事例も紹介しました。

プレゼンテーションでは、「島のブランディングとは、島の魅力を編集すること」とし、島に暮らす人たち自身が「今の延長線上の未来予測」ではなく「理想を具現化する未来創造」に取り組んだ事例として、奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島)の沖永良部島(おきのえらぶじま)の取組を紹介。

島の住民が自ら集まり、主体的に話し合う中でさまざまな分科会が生まれ、他業種での連携が進むとともに、100年先の子孫たちに魅力ある島を受け継ぐための振興計画「Island Plus(アイランドプラス)」などをつくり上げた沖永良部島の取組は、先ほどのアイスブレイクでの姿や、「島会議」が目指すものと重なりました。

大切にしたい島の宝を再発見する「グループワーク」

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続いて、会議メンバーが4組に分かれ、各自が未来に受け継いでいきたい「島の宝」を書き出し、話し合いながら1枚の紙にまとめるグループワークを実施。一組ずつチームが特に残したいと思う「島の宝」について発表しました。

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Aチームの特に残していきたい島の宝は「アンコさん」。
今では市松模様の着物に前垂れ、三原山、椿、波がデザインされた手ぬぐいを頭に着けた女性の総称を「アンコさん」と呼びますが、元々、「アンコさん」は「姉っこ」という目上の女性に対する敬称が訛ったもの。絣の着物も普段着または作業着として着られており、大島にとっては、島の生活風習に根付いた存在。Aチームは「大島の良いところは、大自然を感じられるところだけれど、『アンコさん』はその中に暮らしている女性。そういう女性がたくさんいる『美しの島・大島』をPRすることで、『アンコさん』を残していきたい」とアンコさんの存在を十分にアピールしました。

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Bチームの特に残していきたい島の宝は「きちんと儲けること」。
何を残すか、という視点から一歩進んで意見を発表したBチーム。「何を残していくにも、やはり島や取り組む人が儲からないと続かない。それが根本にあるべきだと思う」と現実を見据えた意見が印象的でした。今回の会議での自由な意見交換を経て、チーム内では「どれも良い意見」と讃え合い、「どれか一つを残すというのではなく、今ある大島の魅力を活用して、新しいものと組み合わせて新しい武器を手に入れ、これからの未来を作っていきたい」と力強く語りました。

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Cチームの特に残していきたい島の宝は「人」。
産業、自然、伝統文化など、さまざまな宝を探し当てたCチームが最後にたどり着いたのは「人」。「人を島の宝として残していきたい。特にこれからのことを考えると、よそ者。島の外、外部から来た人をどうやって大島に残すのか。もちろん物質的な部分での支援は必要だと思うが、どんどん大島で活躍してもらって、いろいろな取組を拡大してもらうために、それをバックアップできる島の中の人たちの優しさとか、島の中から学んでもらうことも大事だと思う」と、島にとっての人財の大切さをアピールしました。

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Dチームの特に残していきたい島の宝は「壊されていくもの」。
抽象的な表現が印象的だったDチーム。「裏砂漠のような大自然に根ざした景観は、この先も残っていけるものだと思う一方で、例えば、椿トンネルなどは、新しい道ができたことで観光客も通らないようになってしまった。結果として、知っている人が少なくなり、いずれこのまま消えていってしまうのでは、と思えてしまう。そういったものを大切にしていきたい」と、開発ばかりでなく、保護育成を心掛けなければ消滅してしまう存在に思いを馳せました。そして、それらを残していくために必要なことは、もっといろいろな人たちに知ってもらうことであり、PRし続けることが重要と力説しました。

これらの内容を受け、事務局から「最後の発表も何が正解という訳ではなく、みんなが一つのテーブルを囲んで議論したことが大切。お互いを理解したり、楽しく、思いを込めて会話ができたことを、今後の島会議での議論にもつなげていってもらいたいと思います」と振り返りました。

参加者の声

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