第4回御蔵島島会議 開催レポート

mikura4_img_01

東京宝島事業では、島の住民が主体となり、各島の魅力について議論し、磨き上げることで、島のブランド化を目指す「島会議」を行っています。11月26日に開催された御蔵島の第4回島会議・スタディツアーの模様をレポートします。

>> 御蔵島の概要はこちら

「御蔵島にあるもの」を生かす方法を探しに

第3回島会議で、御蔵島にあるものを活かしたアクションアイデアを検討した御蔵島の参加者は、そのヒントを探るため神奈川県西横浜にある地域コミュニティスペース「藤棚デパートメント」へ。ここで3つの取組について話を聞きます。

まず登場したのは、宮城県石巻市で「はまぐり浜プロジェクト」を推進する一般社団法人はまのね代表理事。東日本大震災で被災した浜を再生するため、「暮らし・なりわい・まなび」をテーマに古民家を改装したカフェ「はまぐり堂」、SUPなどのアクティビティ、林業、森の再生、漁業、猟、ジビエ、企業研修受け入れなどを行っています。

mikura4_img_02

石巻市出身の代表理事は震災後、2世帯人口5人という限界集落で「人が集う場所にしたい」「何か楽しい場にしたい」という構想を描き、8年をかけて実現してきました。

ボランティアに楽しんで協力してもらいながらカフェを立ち上げ、その後クラウドファンディングや企業の協力、助成金で他の事業も展開して「人が集まる」状況を作りました。
一方で、メディア報道により来客が増え、2年目には年間1万5千人もの人々が訪れた結果、生活に支障が出て近所の不満が増えるなどの問題にぶつかりました。
そこで、「自分たちが大事にしたいものは何か?」を自問。現在は営業日を週3日にし、ランチも完全予約制にするなど反省点を生かした経営を行なっています。

「震災や台風などの天災を体験して、全てをお金に頼るのは脆いと感じ、自分たちが生み出せるものを増やしていきたい」という代表理事に、「その決断の源は?」と質問が挙がると「明日死ぬかもしれないと思ったときに納得できるかどうか」と答えが返ってきました。
また、マンパワーを借りるためのコミュニティ形成の秘訣について、「使命感より楽しむことが重要」という考えに、参加者は共感した様子でした。

利用者の自主性が育つ場づくりのヒント

続いて、建築家でもある藤棚デパートメントのオーナーに話を伺います。藤棚デパートメントは、日替わりカフェや料理教室が開けるシェアキッチンに、セレクトショップ・ライブラリーを兼ねた地域のコミュニティスペースとなっています。 きっかけは、この場所の裏手にあるアパートに住み始めたオーナーが、大家さんから「もっとひらけた場所にしたい」という悩みを聞いたこと。

オーナーは「住んでいる立場で自分ができることは何か?」「(自分ごととして)暮らしやすく利用しやすい環境とは?」を考え、託児所が欲しい、チャレンジショップ的な場所が欲しい、気軽にランチできる場所が欲しいといった地域の声をリストアップ。

mikura4_img_03

クラウドファウンディング、信用金庫、助成金などで3カ月分の運転資金を集め、現在の運営形態を実現しました。利用者は老若男女問わず、1年を通してイベント等を開催しているという状況に、参加者は「トラブルはないのか?」と質問。

「今のところはない」というオーナーは「プロになりきらないように心掛けていることと、顔の見える関係で運営してることがポイント」と話す。「プロになると自主性を削ぐから」。利用者が自主性を持って動く雰囲気が醸成されるよう「一緒にやっていくスタンス」を大事にしているとヒントを提示しました。

次に、逗子でカフェや料理店、イベントなどを1日単位で貸しているチャレンジショップ、チャレンジキッチンとして運営する「アンドサタデー」で、地域内外を繋げるコミュニティ作りもしているファシリテーターの説明に耳を傾けます。

mikura4_img_04

毎週土曜日だけ営業するというアンドサタデーは、定員10人という小さなコーヒーショップ。土曜日以外の日は「みんなでやりたいことができる空間」として、「1日バーテンダー」「1日手芸店」などさまざまなチャレンジを受け入れています。

「小さくても1回やってみることが大事だと感じている」というファシリテーターの話に参加者は頷き、藤棚デパートメントを後にしました。

地域内外の人が共に学ぶシブヤ大学へ

最後に話を聞くのは、「渋谷」という地域を活用し、地域住民と地域外の人々がともに学べるシブヤ大学の学長です。

mikura4_img_05

元は渋谷区が生涯学習の場として提案した構想を2006年からNPO法人シブヤ大学とし、現在まで運営。若者が集う町として知られる渋谷区でも、町内会の担い手は60代が中心。「20代から40代の青年・壮年層が興味のある生涯学習でプログラムを作って、シブヤ大学を利用する流れを作ってほしい」という期待のもと、取組が始まったといいます。

講座の企画や生涯学習の運営は区外の住民でもでき、講座は「街のどこか」で開催。受講料は基本的に無料。

実際に行われてきた企画には「防災マニュアルを作ること自体をプロジェクトにしたワークショップ」や「被災シミュレーションをイベントにした代々木公園でのキャンプイベント」といった具体的なものも。サポーターから寄付として年会費を募るほか、企業や行政との共同プロジェクトで資金をまかなっていると学長は説明します。

ボランティアスタッフが運営を支えているというシブヤ大学。「ボランティアスタッフはどういう形で見つけているのか?」という参加者の質問に、学長は「楽しそうだから自分もやってみたいと申し出があるパターン」「毎月第3土曜日に行なっているボランティアスタッフ募集の説明会で申し込みがあるパターン」の2つがあることを紹介。「年齢層は20〜40代が多いが、会社員としてひと段落ついてこういうのをやりたいと申し出る60代の人もいます」。

最後に、「御蔵島の場合は、宿の関係で1日に来島できる人数が決まっていて集客もそれほど期待できない。クオリティを上げるにはどうしたらいいか」と参加者。学長は「『大きなところではできないことをやる』ことをコンセプトにしている沖永良部島(鹿児島)の事例なども参考になるのでは?」と同じ規模の島々や地域などの事例を学ぶ、というヒントを共有しました。

4つの取り組みから多くのヒントを得た参加者は、次回開催される第5回島会議で具体的なアクションを検討します。

会議のレポートをPDFを見る