第4回父島島会議 開催レポート

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東京宝島事業では、島の住民が主体となり、各島の魅力について議論し、磨き上げることで、島のブランド化を目指す「島会議」を行っています。10月29・30日の2日間に渡り開催された父島の第4回島会議・スタディツアーの模様をレポートします。

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地図を活用して何かできないか? 地図の先駆企業でアイデアを探る

10月29日に行われたスタディツアーには、父島から6名が参加。これまでの島会議で挙がったアクションアイデアを具体化するため、関連する分野で先進的な取組を行う3団体を訪問しました。

まずは、「地図を活用した地域の魅力発信」というアイデアに関するヒントを得るため、地図情報の調査・制作・販売を行う株式会社ゼンリンを訪れました。はじめに、マップデザイン事業本部の担当者が、地図の作り方や地図を活用したアイテムなどについて説明。

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参加者は2,000冊を超える地図データや、地図を印刷した文房具、布製品など様々なアイテムの実物を確認しながら、地図の活用を考えます。

その後、ゼンリン側とのディスカッションで、参加者が「観光客向けの地図でもざっくりした地図しかない」「小笠原全体の地図を作ろうとすると、ほぼ全てが海になってしまう」という小笠原諸島ならではの課題を伝えると、「お店や距離などの基礎情報が入った記事があるとコミュニケーションがとりやすい」「海部分にカット図を入れるなどの工夫をする」などの具体的なアドバイスが返ってきました。

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参加者は、地図を制作するコストや材質、オリジナル製品の作り方について質問を重ね、ゼンリン側からは、「自分で地図をつくるキット」やラグビーワールドカップなどの「テーマに合わせた地図」などの事例を用いながら、「売る場合の計算も大事」といった現実的なポイントもアドバイス。具体的なヒントに参加者は頷き、スタディツアーの1カ所目を後にしました。

WWFで環境保全活動の現状を知り、意見交換

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続いて参加者が訪ねたのは、地球環境保全団体WWFジャパン。地球温暖化を防ぐ・持続可能な社会を作る・野生生物を守る・森や自然を守ることを目的に活動している団体で、特に「森や自然を守ること」について、父島の考えるアクションプランの新規性を確認し、参考事例を学ぶため、コミュニケーションズ&マーケティング室の担当者より、WWFの活動内容についてレクチャーを受けます。

担当者は、人間活動が地球環境に与えている負荷の大きさを示す「エコロジカルフットプリント」をはじめ、地球環境の現況やWWFジャパンの自然保護活動、資金調達活動について紹介。

参加者一同は、世界自然遺産にも登録される小笠原諸島の住民として、環境問題や保全活動を身近に感じているだけに、寄付の集め方や、企業・地域・保全団体のマッチングについて質問を投げかけ、自然環境の保護と同時に外来種の駆除活動も行なっている小笠原の状況を共有しながら意見交換を重ねました。

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「日本は寄付金が集まりづらい印象がある」という参加者の質問に、活動を紹介し理解共感を得ることで月額のご支援をいただくマンスリーサポーターを増やす仕組みや、個人だけでなく企業とのコラボレーション、助成金、遺贈寄付などの具体的手法がヒントとして提示されました。

JTBで父島での社会貢献型のプログラムの可能性を考察

2日目は、東京・赤坂の会議室に株式会社JTBを招き、社会貢献型プログラムに関する市場ニーズをヒアリング。ここでは、父島のアクションプラン「企業向け自然保護プログラム研修」について、市場ニーズがあるか、修正を加えるのであればどのような視点が必要となるのか等、プランを具体化する上での課題を明らかにしていきます。

全国で企業の研修旅行の企画をサポートする担当者からの事例紹介では、製薬会社などを対象に行われる「八芳園の住職によるマインドフルネス体験」や、食品会社向けに行われている「世界のフードロスのユニークな取組」などをテーマにした研修旅行の事例が紹介され、他にも「学び」や「スキルアップ」の要素を含む旅行や、コミュニケーションの活性化に関する研修企画の相談が多いことが、参加者に伝えられました。

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続いて、父島で社会貢献型プログラムとしての研修旅行が実現可能であるかを検討。日程として7日間が必要になることや、受入れ可能な観光客が200人程度であることなど、特有の課題が存在するものの、社会貢献意識の高まりや、SDGs関連の動きも注目されていることから、担当者からは父島の研修プランに可能性があることが告げられました。

スタディツアーを振り返り、アクションプランを検討

最後に行われた振り返りでは、地図を活用した取り組みについて、「色々なことと結びつけられる」「観光客を循環させる方法が、具体的に見えてきた」といった声が挙がります。

一方、環境保全や研修旅行の企画については、「小笠原の人の環境に対する意識は本土の人より高いと感じた」という感想が挙がり、「広く一般に伝わるようにすることも必要」「自分たちの考えていることは、地球にとって大事」という点が改めて確認されました。

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11月25日に開催される東京宝島会議での発表に向けて、スタディツアーを経て形が見えてきた「地図を活用した来島パスポート」「生態系を学ぶ保全プロジェクト」というアクションプランを具体化させていきます。また、父島のブランドコンセプトも、これまでの議論をふまえ、「ありのままにいのちが輝く、別世界を生きる島」に決まりました。

参加者の福田真琴さんは2日間を終えて「これまでの議論の成果が具体的に見えてきて、ここまで進んだんだなと感じました。いろんな業態の人が集まっているからこそできることですね」と、振り返りました。

次回は11月25日に開催される東京宝島会議に臨みます。

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