第4回青ヶ島島会議 開催レポート

東京宝島事業では、島の住民が主体となり、各島の魅力について議論し、磨き上げることで、島のブランド化を目指す「島会議」を行っています。11月26日に開催された青ヶ島の第4回島会議・スタディツアーの模様をレポートします。

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島を大切にし、楽しむ心を持った人を集めるヒントを探る

前回の島会議で、青ヶ島の参加者は改めて島を見つめ直し、「閉じられた状態」にいる「島民のタフさ」を再認識しました。不便な立地や厳しい自然環境下で、何事も自力で前進する強さが青ヶ島そのもの。

そして、そんな青ヶ島に来てほしい人物像は、議論の末、「自然、人、文化を大切にし、楽しむ心を持った人」となりました。

自分の育った絶海絶景の島の魅力がわかり、また大事にしてくれる人に来てもらいたいという参加者の熱意から、アクションプランはドローンを活用したフォトツアーと内地での交流イベントとなりました。

今回のスタディツアーでは、具体的な運営方法はもちろん、観光に特化したアクションを通じ、訪れた人と深い関係性を築くためのヒントを探ります。

「絶景の青ヶ島らしい旅」を掘り下げる対話

最初に訪れたのは、一般社団法人日本フォトツーリズム協会(以下、JPTO)。ドローンを活用したツアーでもキーワードとなる「写真」を軸にしたコンテンツ作りを学びます。

JPTOの理念は、「旅と写真の持つチカラを相乗させ、日本を元気に、地域を元気にし、人と人とのコミュニケーションを元気にする」。
ツアー企画・造成支援や、公募企画等の各種プロモーションの企画・制作・実施をトータルでプロデュースする同団体は、55,000人が参加する日本最大のアマチュアフォトグラファーの団体「フォトカルチャー倶楽部」とも連携し、ファンづくりに苦戦している自治体への「フォトツアー」企画なども手掛けています。

「青ヶ島で、中身のある旅をしてもらうために、写真を観光資源にすることができたら」と話す参加者に対して、「ストーリー性のあるツアーを展開できる」と話すJPTOの担当者は、一方で、ドローンの安易な活用に「待った」を表明。
「写真一枚一枚に大事に思いを寄せる人」と「ドローンを楽しむ人」では属性が異なるという説明に、参加者も納得。青ヶ島という環境下で実現するベストな策について意見交換が重ねられました。

「安心安全」からドローンやペルソナを考え、動く決意

続いて訪れたのは、日本ドローンアカデミー。ドローンをめぐる現状やルール作りに必要なヒントを得ます。

一般社団法人日本UAS産業振興協会に認定を受け、2016年に設立された同スクールでは約500人のライセンスを発行。ドローンを安全に飛行させるための知識と操縦技能を身につけ、安全と法律の知識、安全を管理に日本で最も特化したスクールです。

近年、ドローンを持ち込む観光客が増えている青ヶ島では、20台以上が島に落下しているといいます。「集落は密集しているので島のお母さんたちはすごく嫌がっている。自分たちでルール作りに取り組むことで解決したい」と話す参加者に、担当者は、青ヶ島のような島しょ部では、「個人が所有している場所から30メートル以内は飛ばしてはいけない」といった都市部で制限されるようなルールが適用されにくいと言います。

一方、観光目的だけでなく、測量や災害時の状況確認等、ドローンが活躍できる場面について、アイデアの共有が続きました。ただ、「趣味の人は勝手に飛ばしているだけで、ライセンスは取っていない可能性が高い」と担当者。ライセンス取得の概要や現状、イベントで活用する場合の事故事例など、参加者はドローンに関する幅広い知識を得ました。

離島キッチンの「情報発信へのチャレンジ」と「場作り」とは?

最後に訪れた「離島キッチン」では、関係人口をつくるヒントを学びます。
一般社団法人離島百貨店(島根県海士町)が手がける同店は、小さな離島が連携することで「島が生き残るための大きな力にしよう」と、同じ課題を抱える全国の島々が集い、展開する「離島と都会の交流拠点」です。

ここでは、食の背景にある「文化」「歴史」「物語」も一緒に楽しめる「場」を取り仕切っている大島出身の担当者に、会社の概要や同店のイベント開催までのプロセス、内地でのコミュニティ作りのポイントについて伺いました。

「いきなり青ヶ島に来るのではなく、ワンクッションを置けるよう、ワークショップ、イベントで青ヶ島を伝える場所を作りたい」と考える参加者に対して、「島に行かずとも現場の情報が得られる場」として、SNSを活用した「島と繋がりたいと思っている人」とのコミュニケーションの場作りや、テーマを絞った交流イベントの開催、またそれを継続して行うことなど、同店が行っているファン作りの具体的な手法を学びました。

学び多き1日の振り返り。そして、その先へ。

最後に行われた振り返りでは、「つながり作り」「量より質を」「深く、専門性の高い人を」「安全なドローン」「自分たちのルール作り、法的なこと」など、さまざまなヒントをきっかけに考えを深めました。

その結果、島の人の安心・安全を確保しながら、相互に協力しやすい素地をつくるため、ドローン活用については「自主ルールを作る」「ドローンの安全管理を出来るライセンスを持った2万人の安心安全なプロフェッショナルにアプローチ」、つながり作りについても引き続き議論を続けていく方向性が見えてきました。

「来島者と一緒に地域をよくするためのアクション」と語る参加者は、この取組みからさらに踏み込んで考え、次回の島会議に臨みます。

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