フィールドワークレポート 清澄・両国コース

清澄・両国コースは、築30年のオフィスビルをリノベーションしたホテル「LYURO(リュウロ)東京清澄 ーTHE SHARE HOTELSー」、コインランドリー店が手がけるコインランドリー+αの業態「喫茶ランドリー」、外国人観光客を中心に賑わいを見せるゲストハウス「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」(ヌイ ホテル&バー ラウンジ)の3ヶ所を訪問しました。

隅田川沿いに立つホテル「LYURO」へ

東京の東に位置する江東区清澄白河、墨田区両国は隅田川が流れ、下町情緒あふれるエリア。近年、再開発が進み、カフェや雑貨店、ホテルなどが増え、昔ながらの町並みと新しいお店が建ち並ぶ、新陳代謝がまさに起きているニュースポットでもあります。隅田川が流れ、近くにはスカイツリーや浅草等観光スポットも多く、散歩するにはぴったり。国内外の観光客にも人気が高まっています。

この清澄・両国エリアをまわるのは9名の参加者たち。各島から2〜3名ずつの混合チームとなり、はじめましてな人同士が今日は1日同じメンバーとして一緒にまわることとなりました。

まず向かったのは、「LYURO 東京清澄 - THE SHARE HOTELS -」。清澄白河駅から徒歩10分ほどの隅田川沿いの建造物は、その外観からホテルとは一瞬わかりません。それもそのはず、ここは築30年の元オフィスビル。駆体はそのままに中は全面改装し、2階には隅田川が一望できるテラスとレストラン、3~6階は客室に生まれ変わりました。「LYURO」とは「流路」、すなわち世界とつながる、川の流れのような場所ということから名づけられたとのこと。

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このホテルの仕掛人は、リノベーションを数多く手がける株式会社リビタ。ホテル事業部の西山尚子さんに館内を案内してもらいました。

まず、6階の客室へ。客室は人数や価格に合わせて、個室タイプやドミトリータイプなどさまざま。4人で宿泊できる個室タイプのお部屋を見学させていただきました。通常のホテルの部屋に比べると少々狭さはあるものの、広く取られた窓(こちらは以前のオフィスビルの時から変わらないもの)の向こうには隅田川ビューということもあり、とても開放感を感じます。壁紙には葛飾北斎の隅田川を描いたという浮世絵をモチーフにした絵柄が描かれ、とても日本的でありながら、ベッドが設置された部屋は、どこかモダンで和洋折衷な雰囲気。

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その後、ドミトリータイプなどの他の客室も見学し、参加者はオフィスビルをリノベーションしたということ、その客室のしつらえやデザインなどに、興味津々。「ドミトリーにはどういう方が泊まるのか」「どういう方が多いのか」など質問が飛び交います。

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隅田川沿いということもあり、「川」「水」「流れ」といったイメージから生まれたモチーフやデザインが館内の至る所にちりばめられ、青く落ち着いたカラーリング、波を描いた壁、水たまりモチーフの客室サインやオリジナルの壁紙など、細部に渡る館内デザインに注目が集まりました。また、極力文字を排除しアイコンで表現したユニーバサルデザインにも感心しきり。わかりやすさとスタイリッシュさを兼ね備えたデザインで、とても居心地のいい空間になっていました。

オフィスビルがここまで変貌するということに驚きを隠せません。「次はぜひここに泊まってみたい!」という声がたくさん聞かれました。

「人が賑わう場所を作りたかった」という「喫茶ランドリー」へ

続いて、都営大江戸線両国駅と森下駅の間、墨田区の住宅地に突如現れる「喫茶ランドリー」へ。

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昨今流行のコインランドリー店が手がけるコインランドリー+αの業態とはまったく異なる文脈でスタートした「喫茶ランドリー」。建築ライターを本業とする代表の田中元子さんが、知人からこの物件の1階部分が空くと聞き、何かに使えないかと企画し始めたのは今から2年前のこと。

手袋の梱包作業場として使われていた築55年の雑居ビル。隅田川が近いため、物流の拠点として昔から小さな町工場が多かったエリアですが、時代の流れで廃業する町工場も多く、次第に住宅街へと様変わりしました。たった10年ほど前は、まわりに飲食店はなく、日中ともなれば人のいない閑散とした町でした。そんな時、このビルのオーナーが替わり、「1階をどう使えばいいだろう」と相談されたのが田中さんでした。

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「工場跡がマンションに変わり、人が賑わう場所がなく、町全体がさみしかった。この近くに住んでいた私自身、お茶が飲める場所がほしいという思いから、カフェを始めることにしたんです。けれど今のこの時代、ただの本屋、ただのカフェでは生き残れないと思いました」(田中さん)

そこで思い出しのたが、デンマーク・コペンハーゲンを訪れた際に見たランドリーとカフェが一緒になった「ランドロマット カフェ」だった。カフェの中にカラフルな洗濯機が置かれ、洗濯したい人やお茶を飲みたい人、それぞれが自由に過ごせて、いろんな目的で人が集まる場所になっていたと言います。

「ランドロマット カフェ」にヒントを得た田中さんは、ただのカフェではなく、コインランドリーを併設しようと考えました。けれど、コインランドリーで使用されているコイン式の業務用洗濯機はとても高価で手がでません。「喫茶ランドリー」に置かれているのは業務用の普通の洗濯機。その分、省スペースにもなりました。

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「私がやりたいのはコインランドリー業ではなかったから、コイン式でなくてもいいだろうと。ミシンやアイロンも置いて『家事室』にしたんです。自宅だとなかなか広げるスペースがないミシンやアイロンも、ここに来てできたら便利かなと思ったんです」(田中さん)

しかもアイロンは1時間たったの100円、ミシンも200円という安さ! 近隣のサラリーマンがふらっと訪れてアイロンをかけていくこともあるそう。

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「儲けるかどうかよりも、この場所に人がいる風景がある方がいいじゃないですか」という田中さんの言葉に驚くと同時に、そういう思いから始めたこの場所は確かに人で賑わっていました。人で賑わっている場所には人は自然とすいこまれていくはずです。

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インテリアには目線の低い喫茶店のような椅子を並べ、リラックスできるようにと配慮されています。おしゃれすぎないように、居心地のいい空間をと考えられているので、どこか人の家に遊びに来たような、昔ながらの喫茶店のような、そんなどこか親しみやすい空間になっています。店内にはハンドメイドのアクセサリーや雑貨なども並べられ、とても楽しい雰囲気。まさに地域密着型のカフェであり、多目的施設のような場所。目的があってもなくても、誰でも迎えてくれる、そんな自由な場所でした。

人と人が交流できる場所を提供する
「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」

「喫茶ランドリー」を後にした一行は、地下鉄に乗り、都営大江戸線蔵前駅で下車。こちらも近くには隅田川、スカイツリーも見えます。駅から歩いて5分ほどの位置にあるゲストハウス「Nui.HOSUTEL & BAR LOUNGE」へ。

エントランスにはレンタサイクルが並び、外の喫煙エリアでは外国人が談笑していました。入ってすぐに番台のようなフロントがあり、1階部分は広々としたバーラウンジに。ここはカフェやバーとして使える多目的スペース。宿泊者たちの憩いの場所として、出会いの場としても、もちろん使われるそう。

運営者である、バックバッカーズジャパン最高執行責任者の藤城昌人さんにお話を伺いました。

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オープンして今年で8年。江戸時代から続く玩具会社の倉庫を改装した館内は2階から客室となっており、100名ほど宿泊可能とのこと。ゲストハウスでドミトリーということもあって、1人旅や少人数の旅で利用される方がほとんど。中でも外国人観光客がとても多く、7~8割を占めるといいます。年代は20~30代前半くらい。週末を使って関東近郊から遊びに来た方や地方に住む大学生が就職活動のために泊まることもあるのだとか。

最寄り駅である蔵前駅は、都営大江戸線と都営浅草線が走っており、羽田空港と成田空港へも一本で行けるという便利さと、外国人観光客に人気の浅草へもすぐという好立地。

「ゲストハウスというところに泊まる方は、交流を求めていると思います。旅の仲間が見つかる場所。客室だけでなく、飲食スペースがあることや相席になるようなスタンディングスペースを作っているので、出会いが生まれやすいと思います」(藤城さん)

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「8年前と変わったことはありますか?」という質問には、「ゲストハウスの数がとても増えたこと」と藤城さん。8年前は都内に2~30軒ほどしかなかったゲストハウスが今では10倍にふくれ上がっているとのこと。けれど、同ゲストハウスの客層は8年前から変わらず、外国人が多いのだそうです。

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客室はドミトリータイプをメインに、ツインルーム、ダブルルームなども展開。見学したドミトリールームには、木材を切り出して作った手作りの二段ベッドが設置されていました。キッチンスペースもあり自炊も可能。とても広々とした素敵なキッチンで、宿泊者同士で料理をする、なんてこともあるそうです。

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また、ラウンジ、キッチンスペースともに、アンティーク調のインテリアが独特の空間を作っており、外国のような雰囲気。参加者からは「どこを切り取っても絵になるね」なんて意見も出るほど、思わずカメラを向けてしまいたくなる空間でした。

テーマやストーリーの大切さ、コンセプトやターゲットの一貫性、地域やコミュニティを大切にしながら運営している各施設を見学した清澄・両国コース。参加メンバーは、今回訪れた3施設に共通する「出会いの場」としてのポテンシャルに大いに感心した様子でした。

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